日本上陸の懸念も、刺されれば死に至る外来アリに備える
さらに危険なヒアリ、日本上陸の懸念 刺されれば死に至ることも
我々としては、最終的にアルゼンチンアリを日本から一掃することを目指しています。そこまで高い目標を掲げている理由として、実はもっと危険な外来アリが早晩この国に侵入してくる可能性があり、このアリの侵入に対して万全の防除体制を現時点で構築しておく必要があるからです。 その外来アリがヒアリという、アルゼンチンアリと同じく南米原産のアリです。本種も多女王性の巨大なコロニーを形成し、主に乾いた土壌中で営巣します。巣自体の移動能力は乏しいのですが、新女王やオスアリは羽アリとしてかなりの長距離を飛翔することができるので、移動分散によって急速にその分布を広げることができます。
本種の最大のリスクはその有毒性にあります。ヒアリはお尻に毒針を持っており、巣に近づくものに対して集団で襲いかかり素早く毒針を刺して毒を注入します。その結果、強い痛みと腫れを人体にもたらし、アレルギー体質の人の場合は激しいショック症状をもたらし、最悪死に至ります。実際にヒアリが侵入して分布が広がっている北米では、毎年8万人が刺傷被害に遭い、うち約100人が死亡していると報告されています。
TPPなどグローバリゼーション加速で、日本侵入のリスクが高まる
この毒アリは、1900年代まではその侵入地は北米に限られていましたが、21世紀に入ってから、2001年にニュージーランド、オーストラリア、2005年にシンガポール、中国南部、台湾へと太平洋沿岸の地域に急速に分布を拡大し、日本に侵入してくるのも時間の問題となっています。 本種がわずか数年で太平洋沿岸地域を次々に席巻した背景には、近年の中南米の開発に伴う野内の拡大と農産物の輸出量の増大、さらに東アジア地域の経済発展に伴う天然資源の輸入量増大という経済フローがあると考えられます。今後TPPも含めて、グローバリゼーションが加速することによって、ますます外来生物の侵入リスクは高まってくると考えられます。ヒアリはその第一候補として、十分に警戒する必要があります。 (国立研究開発法人国立環境研究所・侵入生物研究チーム 五箇公一)