【高齢者の食】低栄養予防心掛けて(1月11日)
「人生百年時代」を迎えるに当たり、健康寿命をいかに延ばすかが大きな課題となっている。高齢者の健康を維持するには低栄養予防が欠かせない。適正な食生活を守る環境が必要だ。正しい知識の普及、買い物弱者支援などの取り組みが求められる。 厚生労働省の二〇一九(令和元)年国民健康・栄養調査によると、六十五歳以上の高齢者で体格指数(BMI)が二十以下の低栄養傾向の人の割合は男性12・4%、女性20・7%だった。男女とも後期高齢者の七十五歳以上で増加傾向になり、八十五歳以上で割合が高くなる。特に八十五歳以上の女性は全体の三割近くが低栄養傾向だった。 個人差はあるが、高齢期の食生活の注意点は、肥満など生活習慣病予防が中心となる中年期とは異なる。身体機能の低下を抑えるため十分な栄養摂取が重要となる。一度、低栄養状態になると、回復が難しく、七十五歳前から予防に努めるのが理想的だ。低栄養状態は自覚しにくく気付かないうちに進行していることもある。高齢者自身を含め、家族、介護者らが正しい知識を持ち、適正な食生活を心掛けなければならない。
農林水産省のウェブサイトで公開している「シニア世代の健康な生活をサポート 食事バランスガイド」は、BMI=体重(キロ)÷身長(メートル)÷身長(メートル)=を計算して自分の体格を把握し、食事をチェックすることを勧めている。体重の変化も食事量が適正かどうかの目安になる。 料理を作るのが面倒だからと食事を抜いてしまうと低栄養に陥る。加工食品や市販の総菜の利用も効果的だが、近くに店がない、交通手段がない場合もある。買い物弱者支援が欠かせない。 高齢化率が54・3%と県内でも高い三島町では、町内に総菜を販売する大型店がないため町商工会女性部や地元の女性団体などが協力し、手作りの総菜を販売する夕市を毎月二回開催している。調理に手間のかかる揚げ物や魚料理が特に喜ばれるという。地域に根差した助け合い事業であり、各地に広がってほしい。 買い物支援にはタクシーの割引支援も有効だろう。スーパーなどの売り場に行けば、食べたい物が見つかるかもしれない。適度な運動や人との交流の場にもなる。
日本人の平均寿命は男女とも八十歳を超えている。今二十歳の人は、これまでの三倍以上の人生が待っている。今から食に関心を持ち、好物を増やしておこう。将来、高齢になり食が細くなった時に役に立つ。(三神尚子)