足の冷え症対策は温めるだけではダメ。改善のコツと温活アイテムの使い方
5.足の冷えを改善する方法
冷え症の冷えの多くは、生活習慣上の問題が原因となり起きていることが多いため、冷え症は一種の生活習慣病ともいえるのです。ここでは日常の生活習慣における問題点と改善する方法をご紹介します。 (1)食事 基本的には、下半身型冷え症の人は、健康な人と食事摂取量や体格に変わりはありません。一方、四肢末端型冷え症は、やせ型の人に多く見られます。 この傾向を鑑(かんが)みるに、摂取カロリーが少なく、体温を維持する熱量が不足しているのが根本的な原因である可能性が考えられます。まずは食事の摂取量を増やし、ダイエットをしているなら止める必要があります。 一日中ほとんど座って仕事をする人は、糖質より大豆製品、肉、魚などタンパク質の摂取量を増やすように心がけましょう。生のショウガは血流を改善する働きがあるため、胃腸の弱い人や四肢末端型の冷え症にはよいでしょう。 また、冷たい物や冷えた飲料水の過剰摂取は、内臓を冷やすので避けるべきです。なお、白湯は体にはよくても、冷えを改善する効果は期待できません。 (2)運動習慣 どのタイプの冷え症でも、ハードな筋トレより軽い運動を毎日おこなうことが推奨されます。特に、下半身型冷え症は腰やふくらはぎなど、背部から下肢の筋肉が凝(こ)って血流が悪くなっているため、筋の緊張をほぐし、血流を改善させる運動が必要です。 四肢末端型冷え症は交感神経の緊張で血流が滞り、基礎代謝が低下して、熱を作る力が落ちています。筋肉の運動で自律神経バランスを改善し、熱を作り、補う必要があります。 運動不足の人は、代謝を上げるために、体操、ストレッチ、ウォーキング、ジョギングなど軽い運動を短時間(15分ぐらい)毎日おこなうとよいでしょう。下半身型冷え症には、肩の力を抜いて大股で比較的早く歩く「ぶらんぶらんウォーキング」が効果的です。 (3)睡眠 質のよい睡眠は、精神安定、疲労回復だけでなく、自律神経バランス改善、ホルモン分泌、皮膚や創傷の治癒、凝りの改善、胃腸など内臓機能の改善、免疫能改善などさまざまな作用をもたらします。一方、冷えはこうした効果を阻害するため、対策が必要です。 睡眠時の冷えで一番多い原因は、ベッドや布団など寝具の問題です。最近ではさまざまな材質の寝具が出ていますが、大事なのは寝ているときに体が沈まないことや、寝返りが打てることです。 人は、寝ている間にも無意識に体を動かして循環を維持しています。しかし、体が固定されると、背中や腰の凝った組織の血流低下が持続し、下肢の冷えを悪化させる原因になります。 寝たきりの人では、褥瘡(じょくそう)予防のため体圧分散も必要ですが、低反発の柔らかめの寝具は、体の凝りを固定してしまいやすいので注意が必要です。枕は低くして肩に入れないようにし、ベッドなら通常のスプリングや高反発の物の方が安心です。 (4)服装 女性に冷え症が多い原因の一つに、服装の問題があります。そもそも男性に比べ、女性では肌を被う下着の面積は小さく、しかもおしゃれを優先に、スカートや開襟のシャツなど、体から熱が逃げやすい服装を好む傾向があります。 本来は、生物学的には皮下脂肪や女性ホルモンなどにより女性の方が男性より冷えには強いため、そのようなことが可能なのかもしれません。 下半身型冷え症では靴下、レッグウォーマー、スパッツなどで足を被うのは効果的ですが、これらはあくまで保温のためです。四肢末端型冷え症では、手先や足先ではなく、上腕や体幹部を被う下着が有効です。 最近は熱を発生する繊維による衣類などもあるので、体温を調整しやすくなりました。 (5)入浴 一時、39℃以下のぬるいお湯で長時間入浴する半身浴が推奨されていましたが、実は冷え症の人の入浴法を調べると、半身浴やシャワー浴が多く、半身浴は冷え症には効果的ではないことがわかっています。 心臓や脳など循環器系に問題があったり、体に麻痺があったりして全身浴ができない場合には半身浴にならざるを得ないこともありますが、冷え症には基本的に全身浴がよいのです。 全身浴では、体の修復に関与するヒートショック・プロテイン(熱ショックタンパク)という物質が出るだけでなく、水圧と体温上昇により組織の余分なむくみも改善します。 お湯の温度は41℃から42℃の少し温かいお湯がよいですが、入浴時間は10分以内が原則です。それ以上だと、発汗量が増え、血圧低下も起きやすくなってしまうからです。 二酸化炭素の泡が出る入浴剤は好みで使用してもよいですが、皮膚血流を刺激するため皮膚血流が増えて血圧低下やめまいなどを起こすこともあるので注意しましょう。 (6)鍼灸・指圧・マッサージ 通常の対処法で改善しない場合は、鍼灸・指圧・マッサージなどが有効です。特に下半身型冷え症では、腰や臀部の筋肉の凝りが、下肢の交感神経を緊張させて血流を落とす原因になっているため、鍼灸や指圧などが効果的です。腰痛、腰部脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)、坐骨神経痛などがもとになっている下肢の冷えにも、効果が期待できます。 ふくらはぎの凝りに対しては、反対側の膝頭でふくらはぎを下から上にしごくマッサージが有効です。四肢末端型では、足趾を同側の手の指でしっかり曲げ伸ばす「足趾ストレッチ」などが効果的です。 (7)漢方薬 足の冷えには、漢方薬も効果が有ります。原因に腰痛や腰部や臀部の筋緊張により下肢の血流が悪くなって起こる下半身型冷え症には、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」「独活寄生湯(どっかつきせいとう)」「疎経活血湯(そけいかっけつとう)」などを用いるとよいでしょう。 下肢の冷えに上半身ののぼせやほてりを伴う「冷えのぼせ」タイプでは、「加味逍遙散(かみしょうようさん)」「通脈四逆湯(つうみゃくしぎゃくとう)」「五積散(ごしゃくさん)」などがよいこともあります。 また、四肢末端型では、足先の血流改善には、「当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)」や「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」がよく用いられます。 ただしこれらの処方を決めるには、冷えに関する知識と漢方的な診断を要します。できるだけ冷えに詳しい漢方専門医のいる診療施設を受診することをおすすめします。