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コロナ禍でも明大ラグビー部が極秘で合宿を張った執念の裏側

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ラグビー夏合宿のメッカ・菅平高原に異変

長野県上田市の菅平高原は、日本のラグビーチームにとっては合宿地のメッカだ。夏には多くの高校、大学のチームがこの地を訪れ、100面以上あるグラウンドへ散る。 稲垣啓太 交際中の元“ミス日本GP”美女を高級車でお出迎え 連日の猛練習と同じ屋根の下で暮らす仲間たちとの交流が、多くの若者に苦くとも甘美な記憶を刷り込む。 菅平に揃ったチームの練習試合が、秋以降のシーズンを占う傾向もある。そのため大学の人気クラブが菅平入りした際は、メディア、社会人チームのスカウト、熱心なファンもその場に集まる。エリア内唯一のセブンイレブンには、どこかの選手かスタッフか保護者らしき人物が必ずと言っていいほどいる。 ところが2020年の夏は、菅平がかなり閑散としていた。 新型コロナウイルスの感染が拡がるなか、あるクラブは自軍グラウンドでの練習に切り替え、あるクラブは大学当局から合宿の許可を得るのに時間がかかった。天理大に至っては、部内で感染者が出たため菅平入りの直前に合宿を中止している。 『前へ』という伝統的なスローガンを掲げ、2季ぶりの大学王者奪還を目指す明治大学(明大)もまた、大学の施設である「菅平セミナーハウス」が使えなくなった。すべての部活動の合宿を原則禁止とした大学当局の方針に沿い、「菅平断ち」に舵を切る。 主将の箸本龍雅は、東福岡高校時代も親しんだ菅平では馬刺しを食べるのが楽しみだった。学生生活最後の菅平合宿がなくなったことへは「あったらあったで嫌だなぁと思うのですが、行かないよと言われると、寂しい気持ちはあります」。身長188センチ、体重107キロのサイズで鋭いラン、タックルを繰り出す21歳は、こう吐露する。 「4年生同士では、最後に(菅平へ)行きたかったよな…とは言っています」 しかし就任3季目の田中澄憲監督は、そのままでは引き下がらなかった。普段から東京の八幡山で全寮制を敷くチームにとっても、合宿でしか得られない財産があると知っていたからだ。 「普段も寮で合宿をしているようなものですが、普段だと練習が終われば各々の生活がある。ただ合宿だと、外に行く機会も少ないだけに、皆で集まって練習のレビューができたり、集中的にミーティングができたります。『合宿』という意識があるだけで、ラグビーに集中できる」 ◆合宿でしか得られない「財産」 おこなったのは極秘キャンプ。8月下旬の約1週間、約90名の部員とともに菅平とは別な練習施設へ出向いた。現地住民の反応を考慮し、ホームページにも詳細を明かさなかった。 テーマには『SURVIVE』を掲げた。東京から持ち込んだトレーニング器具での筋力強化、実戦形式のセッションを通して部内競争を促す。練習試合は時期尚早とあって、みっちりトレーニングに時間を割く。 感染症対策も施した。普段、合宿所生活を送る東京・八幡山でしているように、部員を主力中心の「ペガサス」と下級生が多い「ルビコン」に分割。それぞれ異なるスケジュールで動く。 週末に地域の少年サッカーチームが訪れることはあったようだが、宿泊施設は「ほぼ貸し切り」だった。従来のセミナーハウスが「1部屋8名」だったのに対し、今回はひと部屋を4名が使った。館内を歩く際は皆、マスクを着用した。 食堂の入り口前には、フェイスシールドを着けた施設職員が待機。部員の体温を測り、アルコール消毒も促す。室内では選手同士が向かい合わないよう着席し、飛沫が飛び交うのを避けた。 普段から食前の検温をおこなうというチームサイドも、先方の心遣いには感謝しきりだ。そもそも食堂は最大200名が入れるのに対し、「ペガサス」と「ルビコン」が約40~50名ずつ交互に入室。十分にスペースが取れた。 ソーシャルディスタンスを保つ一方、結束力も磨く。「ペガサス」「ルビコン」とは異なる区分けのグループを計6つ作り、ストレングス系種目の達成速度などを争うアクティビティ、ルールの習熟度テスト、「叩いてかぶってジャンケンポン」などのレクリエーション、演芸大会を通してポイントを競い合い、盛り上がった。 今年は、八幡山の敷地内でのバーベキュー大会などの娯楽を自粛してきている。本拠地から離れることで、今季初めて息抜きができたと言える。 帰京後、指揮官が手ごたえを明かす。 「やっぱり、やってよかったなと。これまで八幡山に巣ごもりをしていたような状況だったのですが、環境を変えて練習できたことで、学生の気持ち的にも違いがあったと思います。1日3回の練習をした日もあって、タフな合宿でした。 ただ、環境がよかった。グラウンドは(普段の人工芝より膝に優しい)天然芝で、東京より多少は涼しかったので集中してトレーニングができました。怪我人、体調不良者も出なかった。いいところしかなかったです。迎え入れてくれた方々にも、いろいろな配慮をしていただきました」 昨季まで3シーズン連続で大学選手権決勝に進んだチームが一時解散を決めたのは、4月5日。日本政府が緊急事態宣言を出す前のことだ。 下級生を中心に約半分の部員が、八幡山の寮から各地へ帰省。箸本は寮に残ったリーダー陣とともに、連日ミーティングを開いた。残留組は八幡山エリアから外へ出ないと決めるなど、厳しい行動規範を定めた。 一方で田中監督も、全体練習の再開を目指してゆく。大学の部活動の一環である以上、大学の許可がなければ部活動は再開できない。そのため6月以降は、時間差で帰省組を寮に戻しながら練習再開のための計画書を大学当局に提出。文書の中身が認められた7月中旬、選手だけの自主練習から指導陣も関わる全体練習に移った。 信頼を積み重ねてきたことで勝ち取ったのが、8月下旬のキャンプだったのだ。 9月以降は徐々にトレーニングマッチもおこない、10月上旬に始まりそうな関東大学対抗戦Aを見据える。田中監督は、試合を通してチームを成長させたいと話す。 「学生は試合で成長できる部分が大きい。いつもなら春から夏にたくさんある試合がゼロになって、成長機会(の担保)には難しい状況ですが、手探りのなかやっていきます。(公式戦を含めた)試合のなかで課題を抽出し、シーズン中に修正していくことになると思います」 2シーズンぶりの大学日本一奪還へ向け、苦しい状況もポジティブに乗り切りたい。 取材・文:向風見也 スポーツライター 1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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