「世界変える」英語苦手の私が貧困と向き合ったー成長に期待、留学に変化
地域が求めるグローバル人材は地方から送り出す
大学で自らの意思と行動力で留学経験する学生を増やすために、産業界から出ているもうひとつの強い要望が「高校生からの海外経験」といいます(文科省トビタテ!留学JAPAN)。描くのは「高校で海外に触れ、大学で本格的な留学を」と2段階で経験を重ねる留学イメージ。しかし高校生の留学者数は、2008年3万人を底に少しずつ増加、2013年度4万人を超えましたが、2015年度は多発した海外テロが理由となり、3.5万人に減少。トビタテ!留学JAPANの日本代表プログラムも、2015年から高校生コース(年1回500人募集、留学期間は2週間から1年)を設けていますが、文科省が掲げる2020年6万人の目標達成には厳しい現状です。 高校生の留学が増えない要因のひとつに、国の留学支援が大学に集中しているという問題があります。大学生の留学支援制度には前年度65億円の予算が付きましたが、高校生の留学関連費は1.9億円どまり。昨年12月に内閣府が実施した世論調査では、グローバル人材を育成していくための取り組みとして「高校生の留学支援」(33.9%)を望む声が、「大学生や大学院生、専門学校生の留学支援」(28.4%)を上回りました。 国からの財政支援が厳しい中、地方自治体自らが地元高校生を積極的に送り出そうという動きが出てきています。広島県は2014年から「高校生海外留学1万人プロジェクト」と題したアクションプランを始動。県の留学助成金や奨学金制度、短期留学プログラムの改善運用を図りながら、将来的に毎年1000人以上、10年間で1万人の高校生が海外に留学できる教育環境整備を目指しています。 ふるさと納税の活用で奨学金を支援している自治体も出てきました。福井県はふるさと納税で、返済不要の奨学金となる「福井県きぼう応援海外留学奨学金」制度を設け、昨年秋からは、海外の高校卒業やバカロレア資格取得を目指す1年あるいは2年間という長期留学支援を始めました。ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」と自治体の海外留学奨学金制度連携の動きも始まり、今後は他の自治体でもふるさと納税活用による留学支援が広がっていくとみられます。 こうした地方からも留学生を派遣する機運を盛り上げるため、トビタテ!留学JAPANの日本代表プログラムでは「地域人材コース」を設置。各地域で産官学による協議会をつくること、地元企業によるインターンシップなどが条件で、現在は福島県いわき市など20地域を指定し、地域活性化のテーマに沿った留学を支援しています。 「地域が求めるリーダー像は、まちの課題によって異なるはず」。地域人材コースの指定期間は3年。その間に地方自らが、地域で必要なグローバル人材を送り出す土壌を養成することが狙いになっています。国だけでなく、地域、産業界も挙げて、あの手この手でグローバル人材育成の取り組みが始まっています。