<独自>事務所などから裁判参加「ウェブ口頭弁論」3月の開始から1万9千件 裁判官が認めぬケースも
法廷にいなくても民事訴訟の口頭弁論に参加できる「ウェブ口頭弁論」が今年3月に始まって以降、10月までに計1万9086件実施されたことが29日、最高裁への取材で分かった。開始当初の利用の動きは鈍かったものの、徐々に増加し「順調に利用されている」(ベテラン民事裁判官)。弁護士らの負担軽減につながっているとの声が上がる一方、ウェブ対応の希望が毎回かなうわけではないとの調査結果もあり、裁判の「デジタルシフト」は道半ばだ。 ■「交通費かからず」 「期日によっては(口頭弁論は)5分で対応が終わることもある。圧倒的に時間効率がいい」 ウェブ口頭弁論を活用した経験のある「オーセンス法律事務所」(東京)の平沼夏樹弁護士は、制度をこう評価する。 インターネット回線を通じてビデオ映像で法廷の中と外をつなぐ「ウェブ会議システム」により口頭弁論を行う制度は、令和4年5月に成立した改正民事訴訟法などの段階的な施行に伴い、今年3月から始まった。利用については、裁判官が原告と被告の双方から意見を聞いた上で判断する。 最高裁によると、ウェブ会議システムを使った口頭弁論の実施件数は、開始当初の3月は546件だったが、10月には4734件に増加。累計で1万9086件となり、年内に2万件を超えることが確実視される。 ■日程も調整しやすく 多種多様な案件を扱う民事訴訟は専門性が要求される事件も多く、大都市圏の弁護士が、地方の裁判所で係争中の訴訟を手掛けることもある。口頭弁論の期日が指定されるたびに出張しなくてはならず、交通費などもかさむため弁護士・依頼者双方に負担が大きい。 だが、ウェブ口頭弁論を活用すれば、弁護士事務所などから法廷に出席できるため、出張費はかからない上、「重い事件記録を持ち運ぶ必要もない」(平沼弁護士)。 加えて、わざわざ法廷に足を運ぶ手間が省けることから原告・被告双方の予定を調整しやすくなり、訴訟の迅速化に資すると期待されている。 ■実施には地域差も