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コロナ「抗体検査」の効果と限界を医療統計の視点で解説

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紛れ込みに「埋没」してしまった献血検査

 ここまで紹介したように、陽性率が低いときには紛れ込みの影響が大きくなる。5月15日に結果が公表された献血検体での検査は、まさにその一例である。もともとこの調査は、陽性割合を把握するのではなく、さまざまな抗体検査キットの性能 (見逃しと紛れ込み)を把握するために実施されたものである。新型コロナウイルス以外の影響をできる限り小さくするため、感染者の多い東京(20年4月)だけでなく、同じ時点で感染者が少ない東北6県の検体、さらに新型コロナウイルス「上陸」前の19年1~3月の関東・甲信越の検体でも検査を実施した。  後者2つと前者の差をとれば、新型コロナウイルスの影響をより正確に評価できる。研究の組み方としては妥当な方法であるが、結果は東京の500検体で陽性が2検体にとどまったのに対し、東北の500検体でも1検体、19年の500検体でも1~2検体が陽性になってしまった。  後者、特に19年の検体での陽性者は紛れ込み (他のコロナウイルスに反応したなど)の可能性が極めて高い。紛れ込みの発生が500人中1~2人、東京での結果も500人中2人という状況では、統計的な検討を加えるまでもなく、「感染者数の推計は不可能」と結論せざるを得なかった。  会見では、今後1万人規模での調査を再実施するとの言及があった。しかし、抗体を持っている人の割合が実際に0.5%以下 (500人中2~3人以下)だった場合、特異度が99.5%や99.8%のキットを使ったとしても、本当の陽性者と同じ程度の紛れ込みは避けられない(※)。1万人で調査をすれば陽性者数は多くなるだろうが、紛れ込みの人数も同じ比で増えていくのである。抗体量の測定なども含めた、検査の方法・対象の選択法について、吟味が必要になる。 (※)真の感染者が500人に1人 (0.2%)だった場合に、紛れこみの影響を真の感染者数の10%以下にとどめるためには、許容される紛れ込みリスクは5000人に1人 (0.02%、特異度99.98%)となる。すると、キットの性能を確かめる試験でも、数千人から数万人規模のデータが必要になる。

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