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コロナ「抗体検査」の効果と限界を医療統計の視点で解説

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研究の限界その2 「紛れ込みと見逃し」

 検査が検査である以上、感染しているのに陰性になってしまう見逃し (偽陰性)と、感染していないのに陽性になってしまう紛れ込み (偽陽性)の問題は必ず生ずる。抗体検査でも同じことで、むしろコロナ禍でニーズが高まっている分、性能の低いキットが問題になるケースが多い。実際、米国の規制当局 (FDA)は、3月にいったん緩和していた規制を再度強化し、検査キットの製造元に対して臨床試験のデータとともに緊急使用承認 (EUA)の申請を行うことを義務化した(注12)。  見逃しと紛れ込みは、どうしても見逃しを減らす、すなわち感染している人が陽性になる確率 (感度)を上げる方に目が行きがちである。しかし幅広い対象に検査を行うような状況では、紛れ込みを減らす、すなわち感染していない人を陰性にできる確率 (特異度)を上げることの方がより重要である。  例えば、感染していない人100人のうち、99人が陰性になるならば、特異度は99%、紛れ込みの可能性は1%である。1000人中わずか10人の紛れ込みで、「ほぼ100%」と考えても問題ないように見える。  ドイツの検査(注5、陽性者15%、1000人中150人)のように、多発地域で陽性率が高ければ、紛れ込みの影響は小さい。しかし、サンタクララの検査(注6、陽性率1.5%)やオーストリアでの検査 (陽性率0.33%)のように陽性率が1%前後だと、もともと陽性者が10人しかいない。「1000人中10人が陽性でした。なおこの検査は、感染していない1000人でも10人程度は紛れ込んでしまいます」となると、何を検査しているのかわからない状況になる。  このような環境下では、99%の特異度でも十分とはいえない。サンタクララの検査で使われたキットの特異度は99.5%、最近FDAに承認されたロシュ・ダイアグノスティックス社のキットの特異度は99.8%であった。小数点以下の数字を気にするのは神経質にも思えるが、「95%でも99%でも、細かい数字は気にしない。『ほぼ100%』と考えて大丈夫」とはいかないのである。図に、見逃し0% (感度100%)、紛れ込み0.5% (特異度99.5%)のときの例を示した。もともと抗体を持っている人数が少なければ、紛れ込みの影響は無視できなくなる。  紛れ込みの原因になりうる要素として、別タイプのコロナウイルスと反応してしまうリスク(交差反応)もある。「新型」コロナウイルスと銘打っているとおり、コロナウイルスは今回のもの以外にも6つのタイプがある。6つのうち2つは、2003年に流行したSARS (重症呼吸器症候群)と12年のMERS (中東呼吸器症候群)のウイルスで、紛れ込む可能性は小さい。  しかし、残りの4つは通常の風邪を起こすコロナウイルスで、こちらの抗体に検査キットが反応してしまうと、単なる風邪の経験を「コロナ感染あり」と誤判定してしまうことになる。そのため、正確を期すためには、「風邪のコロナウイルスには反応しない」ことを別途示す必要がある。いくつかのキット(大阪市立大学のキットやロシュ社のキットなど)は、症例数が少ないとは言え、風邪コロナに対する反応性もチェックしている。

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