温泉コンパニオンの性接待「正直、関わりたくない」 男性客に「貸切風呂のカギ」渡す仲居の苦悩、旅館の"黙認ルール”は違法か
●売春防止法では「場所を提供した」側も罰せられる
――コンパニオンが客と性的な行為に及ぶと知りながら、貸切温泉を利用させた場合、旅館側にはどのような問題が生じると考えられますか 「性的な行為=性行為」という場合、それはいわゆる「売春」(=対償を受け、または受ける約束で、不特定の相手方と性交すること)です。 風営法の問題ではなく、売春防止法の問題になります。売春行為には罰則があり、また、売春の場所を提供した者に関する罰則も規定されています(同法11条1項)。 同項には「情を知つて、売春を行う場所を提供した者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」との規定がありますから、今回の相談者が働く旅館についても同項の違反に問われる可能性が十分にあります。 さらに、これが業としておこなわれていると認められる場合には、さらに重い罪、「7年以下の懲役及び30万円以下の罰金」に処せられる可能性があります(同条2項)。
●旅館の「カギは客に渡した」との言い訳は通じるのか
――旅館は罰せられるのでしょうか さて、相談内容から、旅館が罰せられる可能性があるかどうかを考えるうえで、最大のポイントは次の2点です。 (1)旅館がコンパニオン派遣会社からもマージンを取っており黙認状態 (2)コンパニオンと客が貸切温泉を利用中の場合は2人の声が聞こえることのないように、その隣の温泉に客を入れるなという指示もしている 売春場所の提供により罰せられる条件としては、旅館側に「故意」があったこと、つまり、旅館側において、派遣されたコンパニオンと客との間で、売春行為がおこなわれることを知って場所を提供していたことが必要になるわけです。 (1)と(2)は、このような旅館側の故意を強く推認させる事情となります。 なお、旅館からは「カギは客に渡しているし、客が勝手にコンパニオンを呼んで、勝手に買春行為に及んだだけ、旅館は知らなかった」という反論がされると思いますが、上記の(1)と(2)の事情を考えると、旅館側の故意が否定されるとは考えづらいです。 したがって、あくまでも相談内容からの判断にはなりますが、きっかけがあれば、旅館が売春防止法違反で処罰される可能性は十分にあると思います。 ただし、もちろん刑事事件の話ですから、故意の有無については厳密な立証が必要とされます。問題となっている買春行為をしている客が常連か否か、旅館とコンパニオン派遣業者の間における具体的なやり取り、そのような行為がおこなわれている状態がどれくらいの期間続いているのか、その他、従業員の証言などの事情も総合的に考慮したうえで、犯罪の成否は決まります。