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【ネタバレあり】『呪怨:呪いの家』で描かれた“本当の恐怖” 鍵となるのは実在の凶悪事件

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リアルサウンド

実際にあった平成の凶悪事件と“顔”の不在

■実際にあった平成の凶悪事件が浮き彫りにする、人間の狂気  本シリーズには「コンクリート事件」の他にも、実際に起きた様々な事件が絡み合ってくる。第1話で強烈な印象を持たせ、後に「呪いの家」に関する情報提供に役立つ男Mは「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」の犯人。余談ではあるが、劇中でM本人が自身を「オタク」と言うのが印象的だ。この事件は、当時その犯人である宮崎勤が「オタク、ロリコン、ホラーマニア」として報道されたことから、世間が「オタク」に対して強い偏見を持ったからである。  そして「呪いの家」に住んでいる灰田家に起きた悲劇は「名古屋妊婦切り裂き殺人事件」、大人になった聖美が外国人相手に売春をしていたのは「東電OL殺人事件」がモチーフとなっている。聖美を訪問しに小田島(荒川良々)らが聞き込むシーンも、実際の事件が起きたアパートのある渋谷の円山町付近で撮影されていて忠実だ。  「地下鉄サリン事件」も登場し、まさにこのドラマ内で描かれている10年が狂いに狂った時代であることがよくわかる。いかれた事件ばかりだ。こうした数々の残酷な猟奇事件から、その被害者から、呪いは生まれる。その呪いは、土地に染み付く。映画『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』でも描かれていたように、土地が穢れをまとっていくのは、そこで長年にわたって人間の狂気による罪、殺人が繰り返されるからである。そして何より怖いのは、その何者かによる猟奇的な行いが今日までどこかで続いているということだ。つまり、「呪いの家」は私たちの知らないところで増え続けているのかもしれない。 ■『呪怨』の顔が出なかったことで、明確に伝わった物語の核  私は本シリーズが、本当によくできた作品だと思っている。小田島という、我々と同じように『呪怨』の物語を俯瞰的に捉えるストーリーテラーのようなキャラクターがいるのが面白い。そして話のテンポが良いのに1話ごとの重量感がすごくて、30分程度で観終わったとは思えないほどの見応えがあるのも満足度が高い。  しかし一番良いと思ったのは、「めちゃくちゃ怖い」ことだ。そして、その怖さはビジュアル頼りじゃない。実は、本作にはこれまで『呪怨』をめちゃくちゃ怖くしてきた名選手・伽椰子と息子の俊雄が不在なのだ。シリーズがJホラーの中でも、ここまで続編やリメイクが作られてきたのは、一つにこの母子の存在感が強い。海外版は、話はめちゃくちゃだが、とにかく伽耶子を出すという強い意思を感じる。しかし、『呪怨』の核となる恐怖は、伽椰子という化け物とイコールではない。伽椰子は、単なる被害者の一人でしかないのだ。  『呪怨』の核、それはいつだって「本来愛し合う存在の家族間での殺戮」である。これまでに述べた、子供を省みない親、そして浮気を疑い合う夫婦など、崩壊した家族の悲劇こそがテーマなのである。『呪怨:呪いの家』は、本家シリーズにてトラップ型殺戮マシーンでしかなかった伽椰子の存在を消し、主体を「呪いの家(土地)」と「人の業」に持たせたことで、これを上手く描き切ったのだ。尚且つ、「呪いの家」とは伽椰子の住んでいた従来の家に限らず、日本全国に、いや、もしかしたら近所にあるかもしれない……という作品の底に眠っていた真の恐怖を引き出している。そこに、先に述べた実在の事件を絡ませることで、より「リアリティー重視のホラー」として人々を恐怖の底に落としたわけだ。  ちなみに、これと同じ作り方をしたのが、シリーズのスピンオフとして知られる『呪怨 白い老女』と『呪怨 黒い少女』である。この2作品もまた、伽椰子と俊雄が出てこず、「呪いの家」で悲劇を生み出す一家を描いていて、まさに“呪怨スピリット”弾けまくりの作品だ。やはり伽椰子が手を下さない方が、より家族同士の殺し合い感が出て惨たらしいものになる。個人的な印象ではあるが、この両作品、特に『白い老女の方は、起きる出来事がシリーズの中で一番ヤバくて胸糞悪い。

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