ロコ・ソラーレが日本選手権で優勝できたのはなぜか。ディティールを突き詰めた総合力の高さを証明した
北海道北見市のアドヴィックス常呂カーリングホールで開催された今季(2021-2022)最終戦となる『第39回 全農 日本カーリング選手権』は、北京五輪で銀メダルを獲得したロコ・ソラーレが終始安定した試合運びで優勝。来季(2022-2023)の日本代表となった。 【画像】氷上を彩ってきた「カー娘」たち その戦いぶりは決して派手なものではなかった。ロコ・ソラーレがラウンドロビン(総当たりの予選リーグ)の8試合で、3点以上を獲得したビッグエンドはわずか3エンド。フォルティウスが8エンド、中部電力と北海道銀行がそれぞれ7エンドと、クオリファイ(プレーオフ進出)したチームと比較すると半分以下だ。 だが一方で、スチールは15エンドとトップの数字を記録。多くのエンドで、リード吉田夕梨花の2投でセンターラインを押さえてハウスを狭め、プレッシャーをかけ続けた結果だ。 また、全10試合で2点以上を追うシチュエーションとなったのは1度だけ。どのチームも、リードを許してしまうと試合終盤に向けてアイスリーディングの正確性を高めてゆくロコ・ソラーレを捕まえることができなかった。 ラウンドロビンのフォルティウス戦で、唯一2点以上のリードを奪われて黒星を喫したが、「この試合は決勝でも使うシートですから、いい情報を得られました」と、スキップの藤澤五月。プレーオフ以降を見据えての戦略も光っていた。
実際、そのシートDで行なわれた北海道銀行とのプレーオフ、中部電力との決勝の2試合で、相手に複数点を許したのは1エンドだけ。ラウンドロビン同様、ビッグエンドはなかったものの、先攻で1点与えて後攻で複数点を奪うカーリングの基本に立ち返ったかのような戦いぶりで頂点に立った。 準優勝の中部電力のパフォーマスも悪くはなかった。ロコ・ソラーレとの決勝では、1エンド目に1点をとらせて迎えた2エンド、セカンド鈴木みのり、サード中嶋星奈のヒットロールを足がかりに、2点、あるいは3点まで視野に入る好形を作った。 だが、ロコ・ソラーレのバックエンドは、ミスとは言えないレベルの小さな綻びさえ見逃さない。サード吉田知那美のヒットロール、藤澤のあわやトリプルというダブルテイクアウト、さらに藤澤の2投目のヒットロールと、投げた石、弾いた石すべてに役割を持たせるショットを立て続けに決め、中部電力のチャンスを1点に抑えた。「我慢できたエンドでした」とは試合後、キーエンドを質問された際の藤澤の談話だ。 前述のとおり、中部電力にミスと呼べるようなものはなかった。ただ欲を言えば、中嶋の2投目、ダブルテイクアウトしたシューターの残す位置について、もう少し注意を払ってもよかったかもしれない。加えて、フォース北澤育恵の1投目をもう少し掃いてハウスの深くまで入れておけば、かつ2投目のウエイトと幅のとり方を念入りに確認しておけば、という悔恨が残るエンドとなってしまった。 もちろん、それは結果論。「たられば」にすぎない。 しかし勝ったロコ・ソラーレは、そうした「たられば」をひとつずつ潰していって、ディティールを突き詰めてきたからこそ、北京五輪で銀メダルに輝いて、今回も表彰台の一番高いところに立てるチームへと成長してきた。石ひとつ分の精度、コミュニケーションの濃度、そして予選時からファイナルを見据えている準備といった、まさに総合力に秀でたチームであることを証明しての優勝だった。