日本にカジノはできるのか? 法案の行方や設置場所の見通しは
カジノ合法化へ向けた動きが再び加速しています。先の通常国会では維新の会が衆議院にカジノ法案を提出。この秋にも超党派議連が法案を提出するという報道があります。ギャンブルとしてのカジノが刑法で禁じられている日本では、合法化に向けた動きがこれまで何度も出て来ましたが、いずれも法律化には至りませんでした。推進派がいる一方で、反対派も存在するカジノ。日本にオープンする日は来るのでしょうか? 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの経済・社会政策部の太下義之氏は「法案は年内に提出され、成立する可能性が高いのではないか」と見通しを語ります。 カジノ法案が成立した場合、日本ではカジノはどのような展開を見せるのでしょうか。太下氏は、日本のカジノはシンガポールのように「特定複合施設」のような形になるのではないか、と見ます。つまり、カジノだけがポツンとつくれるわけではなく、カジノをはじめとしてレジャー施設、国際会議場、展示場、ホテルなど世界から人を集める施設が1カ所に集約的に整備されるイメージだといいます。提出が検討されている法案も「特定複合施設」の整備推進のための法案となる見込みです。 カジノの設置場所については、最終的には全国で10カ所程度できるというイメージで、これは道州制をにらんでいる、という見方があるようです。道州制が導入された場合に、各地域の財源や集客施設としての期待です。ただ最初から10カ所つくるのは難しいので、最初の候補地としては、東京、関西、沖縄が、そして、東京の場合だとお台場が濃厚なのではとの見方もあります。 オープンはいつごろになるのでしょうか。年内に提出される見込みがあるのはいわゆる「基本法案」。カジノ設置の詳細を定める「実施法」は来年度以降に審議されることになり、さらにカジノ誘致を目指す自治体が計画をつくって国の承認を受けたりする必要があるので、実際の開業はずっと先になりそうです。東京五輪実現を見越して2020年めどのオープンを目指すのでは、との見方もあるようです。 推進派と反対派がいることからわかるように、カジノにはメリットとデメリットがあります。 カジノのメリットとしては、まず一番に経済への波及効果が挙げられます。カジノが設置される地域経済の活性化や雇用創出、外国人観光客を呼び込んでの観光振興などです。そして、国や自治体などの財源確保にも期待されています。 逆にデメリットは、治安の悪化や犯罪率上昇、地域環境の悪化、青少年への悪影響、ギャンブル依存症患者増加の懸念、などが挙げられます。治安の悪化については、はっきりとしたカジノとの因果関係はないと言われていると言われていますが、ギャンブル依存症の問題については「確実に現れる最も大きなデメリット」と見られています。 世界的には、カジノを開設している国が少なくありません。世界112カ国で開設されていて、経済協力開発機構(OECD)加盟国でカジノを合法化していないのは、日本とノルウェー、アイルランドだけだと言われています(2006年時点)。シンガポールでは、カジノの悪影響を懸念し、なかなか解禁されませんでしたが、観光客数の落ち込みなどへの危機感などから合法化が決まり、2010年に合法カジノが開業しました。 太下義之(おおした・よしゆき) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 芸術・文化政策センター長。 文化経済学会<日本>理事。文化政策学会理事。文化審議会文化政策部会委員、東京芸術文化評議会専門委員。大阪府・大阪市特別参与、沖縄文化活性化・創造発信支援事業評議員、鶴岡市食文化創造都市アドバイザー、公益社団法人企業メセナ協議会監事。文化情報の整備と活用100人委員会委員。著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム発起人など。