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<甲子園交流試合・2020センバツ32校>磐城ナインを見守る人々 我が子の雄姿、目に焼き付け あす国士舘と対戦 /福島

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 「2020年甲子園高校野球交流試合」(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援)に出場する磐城は15日、国士舘(東京)と対戦する。1月のセンバツ出場決定以降、浮き沈みを味わった選手たちを間近で支えてきた人たちもまた、夢に見た甲子園でのナインの晴れ姿を特別な思いで待っている。【磯貝映奈】 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら  7月23日、郡山市のヨーク開成山スタジアムのスタンドに、そろいの青いポロシャツと「IWAKI」の文字が入った白いキャップを身に着けた約50人の一団が陣取った。磐城ナインの保護者たちだ。中止された夏の選手権福島大会に代わり、県高野連が開いた独自大会の初戦。センバツの中止、休校、恩師の離任など長く続いた我慢の時を乗り越え、今年初めての公式戦で躍動する我が子に拍手を送った。  「子どもたちは、喜びの絶頂もどん底も経験した。ひと言で表すならジェットコースターみたいな日々だったと思う」と、野球部保護者会の市毛芳幸会長は言う。それは選手を日々見守り、練習試合のたびに応援に駆けつけてきた保護者にとっても同じだった。  1月のセンバツ出場決定の日、学校のグラウンドわきにはスーツや作業着のまま集まった大勢の保護者の姿があった。25年ぶりの甲子園出場を選手とともに喜び、中には、こみ上げる思いを我慢できずに涙を流す人もいた。だが、新型コロナウイルスの感染が広がると、学校は3月から臨時休校になった。センバツは中止され、木村保前監督らが離任した。5月には夏の甲子園も中止が決まった。  「16、17歳の高校生にとって、どれだけつらく重い出来事だったか。勉強も野球も本当に頑張っている彼らに、これ以上頑張れなんて言えない。何と声をかけるのが正解か分かりませんでした」  進学校ならではの悩みもあった。夏の甲子園が中止となった段階で、勉強に専念するために引退を考えた選手もいた。清水真岳選手(3年)の父和彦さんは「どういう選択をしても応援するつもりだった。ただ長時間机に向かう姿を見ると、このままでいいのかなという気持ちもあった」と、当時の複雑な心境を明かした。  一方で、市毛さんは、選手たちが逆境を乗り越え、独自大会に向けて一丸となっていく姿に成長を感じたという。「元々同年代の子たちよりもずっと成熟しているチーム。彼らだから乗り越えられたし、この1年でさらにたくましくなったと思う」と目を細める。  15日の国士舘戦は、3年生の親にとっても最後の試合になる。保護者は甲子園のスタンドで観戦できることになったが、コロナウイルス感染防止のため、大きな声を出すことはできない。市毛さんは「子どもたちが甲子園で試合できるだけでも本当にすごいこと。実現に尽力してくださった多くの方にとにかく感謝したい。彼らが全力でプレーする姿を目に焼き付けたい」と話した。精いっぱいの拍手で応援するつもりだ。  ◇ご飯6升、選手を満腹に  「磐高野球部が甲子園で試合をする。夢みたいな話だね」。こう話すのは、学校の正門前で食堂兼商店を営む佐々木建一さん(66)だ。木村前監督から「選手の体を大きくしたいから」と頼まれ、2015年からほぼ毎日、選手たちが練習途中に食べるご飯を3升炊きの釜二つを使って炊き続けてきた。  5月中旬、木村さんが佐々木さんの店を訪れた。木村さんは、幻となったセンバツのペナントと記念ボールを佐々木さんに手渡し、「大変お世話になりました」と頭を下げた。「誰が悪いわけでもない。選手たちは本当に頑張っていた」と話したという。  店内には甲子園やラグビー部の花園出場記念のペナントが並ぶ。磐高OBでもある佐々木さんは「どの全国大会出場も本当にうれしかったし、子どもたちも先生方もよく頑張った。でも今回以上に忘れられない大会はこの先ないと思う。誰も責められないからこそ、木村先生の言葉は重かった」と振り返る。  新型コロナウイルスでは、佐々木さんの店も大きな影響を受けた。休校で学校帰りに立ち寄ってくれた生徒が来なくなり、市内の高校での弁当の販売もできなくなった。売り上げは一時、通常の半分以下にまで落ち込んだという。  学校が再開され、徐々に客足が戻ってきた6月10日夕、思いもかけていなかった吉報が飛び込んだ。センバツ出場校が甲子園で1試合だけ試合ができるという知らせだった。「苦しい時に明るい話題をくれるのが磐高野球部」と佐々木さん。国士舘との一戦はテレビで観戦するつもりだ。  佐々木さんは「他の競技の3年生を思うと複雑だが、高校球児にとっては甲子園がすべて。自分たちでつかんだチャンスなのだから、最高の舞台で、悔いのないように楽しんできてほしい」とナインにエールを送った。

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