世界中の人が「プーチンの表情」に抱く違和感の正体とは
犠牲おかまいなしの猛攻
開戦から4ヵ月を迎えようとしているウクライナ戦争は、東部を主戦場とし、文字通り1m刻みでの激しい攻防が続いている。すでにロシア軍の死者は1万5000人超、一方のウクライナ軍も死者が1万人に上ったと発表した。ウクライナのゼレンスキー大統領は、 【写真】プーチン大統領の容貌の変化 「我が軍の損失は甚大だ。戦線を押し戻すために、今の10倍の武器を提供してほしい」 と悲鳴をあげている。 ロシア軍はルハンシク州の最後の要衝セベロドネツク攻略のため、3本の橋を落として同地を孤立させ、自軍の犠牲が増えるのも厭わずしゃにむに火力をぶちこんでいる。砲撃の目標には民間施設が多く含まれ、市民の犠牲も大きい。 しかし、いくら国際社会から非難を浴びようとも、プーチン大統領はウクライナを地上の地図から消してロシアの一部にしようという無謀な目標に突き進んでいるようにしか見えない。なぜそこまで焦っているのか。 セベロドネツク大攻勢の10日ほど前、ウクライナ国防省の情報総局を率いるキリロ・ブダノフ総局長が、こんな思わせぶりなことを口にしている。 「ロシアの政権交代に向けた準備が進みつつあると確信している。ブレークポイントは8月下旬だ」 情報総局とは諜報部門であり、同局はGRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の流れを汲む。'14年のロシアによるクリミア侵攻以後は、米英を始めとする西側諜報機関と緊密な連携をとっているとされる。 そのトップが口にした「プーチン8月退陣」とは、いったいどのような意味を持つのか。 ロシアの軍事研究で知られるシラキュース大学政治学教授、ブライアン・テイラー氏は言う。 「プーチンはいまや終焉に向かってまっしぐらに進んでいると言わざるをえない。今のロシア軍はドンバスなどで攻勢に出ているように見えるでしょうが、経済制裁のインパクトが次第に政権を蝕みすればするほど終焉が加速していくのです」 プーチンについて、このところしきりに浮上しているのが、「健康不安」説だ。テイラー氏の元にも「プーチンは甲状腺がんに罹っている」という情報がいち早くもたらされたという。 それ以上に重要な証言者に本誌は話を聞くことができた。英国情報局秘密情報部、MI6元長官であるリチャード・ディアラヴ氏である。氏は、自身が現在、常時ロシアの監視を受けている、と明かし、言葉を選びながらこう語った。