Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

全国民PCR検査、今すべき?

配信

Japan In-depth

尚、論稿では複数回の検査を行うことが前提となっている。小黒一正氏が、連続検査の効果を公開しているので、実際に確認してみて欲しい。 >偽陽性の問題と連続検査の効果はこちらのエクセルシートで確認してみて下さい。https://t.co/OKTFCuhAU8 pic.twitter.com/bi7cHlDp6U - 小黒一正 (@DeficitGamble) May 15, 2020 https://bit.ly/2WSPeix 連続検査の効果(Excel) 提供:小黒一正氏 さらに、全国民が1~2週間に1度PCR検査を受けられる体制を作るとしているが、その間に無症状者が感染を拡げるリスクがあるわけで、そうなると、この検査の実効性そのものが揺らいでくる。 これらの理由から、大規模検査の実施は極めて難しいのでは無いかと考えざるを得ない。 論稿に関し、疫学が専門の名古屋市立大学大学院医学研究科の鈴木貞夫教授は、「私が問題だと思うのは、検査を「受けない」人をどう扱うかということです。そもそも私は受けませんし、そういう人は相当いるのではないでしょうか。本提言が『全数近く』を前提にしているのなら、そもそも成り立ちませんし、すこしでも『強制』をにおわせるようなことがあればそれは『人権問題』だと思います。そのあたりについての記載が一切ないのが気になります。」と述べた。

■ 日本の対応は遅れていない そしてもう一つ、大切なことがある。 依然多くの人が、日本はPCR検査が他国に比べて少なく、真の感染者数がわからないのが問題だ、と考えている。しかし、それは一部のメディア、特にワイドショーが声高に言っていることであり、それを見聞きした人達がそう信じ込んでいる側面がある。 これに対し、WHO(世界保健機関)のシニアアドバイザー進藤奈邦子氏は、5月10日のNHKのニュース番組で、「日本の検査体制が不十分などの理由で日本の対応の遅れを指摘する声もあるが、日本の対策をどう見ているか」とスタジオから聞かれ、それを全否定した。 その内容は: ・日本が低いレベルで(感染を)押さえ込んできているのは、世界的に見ると、ほぼ奇跡とみられていた。 ・その理由は、世界から仰ぎ見られるような感染症の専門家がいて、彼らが陣頭指揮とってきたことだ。 ・また、国民の高い衛生意識、感染症に対する理解がきちっとしていたことが上げられる。 ・日本の死亡者は欧米諸国に比べ、圧倒的に少ない。 ・(なので、日本の)「検査の遅れ」というのは、私たちは間違っていると思う。 ・日本の戦略的検査は高く評価している。 どうだろう。大方の読者の認識と大分乖離があるのではないだろうか。それは多くのメディアが政権批判に走るあまり、PCR検査の少なさをたてに日本政府の対応が遅く稚拙である、との論を展開しているからだ。オール野党化しているといってもいい。死亡者が725名(厚労省資料:5月16日版による)にとどまっていることをなぜ評価しないのか? 国家の役割は、感染者を押さえ込み、死亡者数を極力減らすことである。これまで日本はクラスターを発見したら徹底的に対策を取ると共に、緊急事態宣言下の国民の自粛によって感染爆発と医療崩壊を極力防ぐ戦略をとってきた。今になって批判する人がいるが、37.5度が4日続くまで様子を見る、という指針は、非感染者を医療機関に殺到させないために貢献したといっていいだろう。 また、日本人の高い意識で、強制力の無いソフト・ロックダウンにもかかわらず、大都市の主要ターミナルの人出を約80%も抑制することに成功したばかりでなく、デパートや大規模商業施設だけでなく、多くの小規模飲食店が痛みを感じながらも休業したり、時短営業を遵守している。その結果が今、数字として表れている。34県の緊急事態宣言が早期に解かれたのも、これまでの政府の対策と国民の自粛のたまものであろう。 ■ 経済再開に向けて 繰り返しになるが、論稿の趣旨である「一日も早い経済再開」は待ったなしだ。特に東京、大阪など大都市の解除が待たれている。 そうした中で、今すべきことは医療リソースと財政に負担の大きい大規模検査では無く、非常事態宣言解除後に来るかも知れない第2波、第3派に耐えうる社会システムの構築だろう。 まずは、今回不足した、医療用手袋、医療用ゴーグル、防塵服、N95マスク、ゴム手袋など、医療リソースの供給体制見直しが求められる。 不足しているICUや隔離病棟の確保をどうするのかなど、医療面での課題は多い。感染症に特化した、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のような組織が日本にも必要かどうかの議論もある。 そして今後、接触者追跡をどう行うのか。プライバシー意識の高い日本においてどのようなシステムが構築できるのか、今から考えておかねばならない。 また、私たちの日常生活が大きく変わってしまった中で、今後ニーズが高まるであろう非接触エコノミーをテクノロジーの力で推進することが求めれる。あらゆるビジネスがその形態を大きく変えていかなくてはならないだろう。グローバル・サプライチェーンの見直しも急務だ。 働き方では、テレワークの一層の徹底、対面が必要とされる仕事の見直しが進むだろう。人事評価システムなどにも影響必至だ。 さらに、今回大打撃を被ったエンタテインメント関連ビジネスを持続可能にする仕組みも作らねばならない。 教育では、休校により遅れてしまった子供達の学びの質をどう担保するか、9月入学に移行する場合の問題点の洗い出しと対策を加速せねばならない。 そしてなにより、そうした変化の中で弱者が取り残されることの無いようなセーフィティー・ネットワークの再構築が必要だ。 「命も経済も守る」 それは決して簡単なことでは無い。新型ウイルスは、今、日本人の知恵を試している。 注1)擬陽性と偽陽性について 擬陽性 検査結果として,陽性と陰性の間に位置するもの。ここではPCR検査の結果が白とも黒ともつかない灰色状態。PCR検査であれば再検査すれば白黒の判定はつくことが多い。公衆衛生的には暫定的に「陽性」と扱うことも可能である。 偽陽性 検査結果としての「陽性」が間違っていたこと。ここではコロナに感染していないのに検査で陽性に出ること。検査時点では偽陽性かどうかは分からないし、事後の経過や再検査の結果から「間違い」とわかることもあるし、分からないこともある。集団全体としての偽陽性率は推計できる。 (了)

【関連記事】