“ダークスカイ”取り組む町は今 「いつまでも星降る夜空を」
星に願いをかけられる夜空をずっと―。なだらかな高原にあり、その町名の通り、美しい星空で知られる岡山県井原市の旧美星町地区が、国際的な「星空保護区」の認定を目指している。光害対策として、約400のLED街灯を上空に光が漏れにくいタイプに交換するプロジェクトが進行中で、来春にも保護区認定を申請する。「50年後、100年後の世代に、美しい星空を残したい」(市の担当者)。星にまつわる伝統と歴史を大切に紡いできた町の願いは天に届くだろうか。(共同通信=石井祐) ▽まぶしくない夜空 岡山市から西に車で約1時間半、岡山県の西端近くに位置する美星町。10月20日、改良したLED街灯の取り付け作業があると聞き、町を訪れた。中心部の標高は約330メートル。周辺には田んぼが広がり、家々が間隔を空けて並ぶ。地区の人口は4千人ほどで、コンビニは無い。 9月に一度取材で来たものの、まだ実際の夜空は見ていなかった。星空撮影用のカメラと三脚もしっかり車に積んできた。美星支所付近で車を降りると、澄んだ空気が肌に触れた。
美星支所がある中心部から、さらに車で15分ほど、約4キロ離れた「八日市地区」に向かう。市が、LED街灯の交換事業のモデル地区と位置付けた集落だ。 集落では、地元の電気会社の若者たちが電柱に登り、旧タイプを取り外し、改良タイプに換えていた。作業を見守る三宅輝明社長(55)は「改良タイプにしたら、集落全体の光は暗くなり、落ち着いた。全然違いますよ」と胸を張る。 日没後の午後8時ごろ、街灯が取り換えられた集落内を歩いてみた。LEDは電球色で、まぶしくない。街灯と街灯の合間はうす暗く、空を見上げると無数の星々が見えた。 他の地区でも星空を見上げてみたが、旧タイプの街灯が一度目に入ると、しばらくまぶしさが消えず、せっかくの夜空が少し損なわれて見えた。 ▽またたき少なくシャープに見える星 旧美星町は1954年に四つの村が合併して誕生。町名は、町内を流れる美山川と星田川から1文字ずつ取って名付けられた。流れ星が落ちた古い伝説を信仰する「星尾神社」があり、毎年8月7日には七夕祈願祭が開催されている。