八嶋智人 いつもご機嫌で共演者とも打ち解け、携帯の連絡先は4千件 楽しむことを徹底する理由
事務所に入ってすぐに、ドラマ「みにくいアヒルの子」の特番で馬の出産に立ち会う若者を演じるために北海道へ。翌年はNODA・MAP「ローリング・ストーン」の舞台に立った。八嶋の存在感は加速度的に強まっていく。 99年のドラマ「救命病棟24時」、2001年には木村拓哉主演の大ヒットドラマ「HERO」の検察事務官役で登場。バラエティーでも「ココリコミラクルタイプ」で活躍するが、八嶋の名を全国区にしたのは02年に始まったバラエティー番組「トリビアの泉~素晴らしきムダ知識~」だった。面白い雑学や知識をVTRで紹介し、それをゲストが見て納得したら「へぇ」ボタンを押すという番組で、八嶋は高橋克実と共にMCに抜擢(ばってき)された。 出演のきっかけはパルコ劇場の舞台「おかしな2人」で高橋とスペイン人の兄弟を演じたことだ。2人で相談して台本をふくらませ、コミカルな掛け合いで客席を笑わせた。新番組「トリビアの泉」を立ち上げようとしていたフジテレビのディレクター木村剛(49)と塩谷亮(48)は、この舞台を見て2人をMCに即決する。 まだ新人ディレクターだった2人にとって、八嶋は心強い存在だった。 番組の収録は夕方からなのに、八嶋は昼すぎには局に来て資料を読み、番組中に流すVTRをすべて見て確認する。不明な点を質問し、自分の言葉で説明できるように準備した。ここまでやってくれる出演者はめったにいないことを、2人のディレクターは後の経験で知った。 「VTRを面白くしてくれたのは間違いなく八嶋さんです。インパクトのある映像が出る前に、『来ますよ、来ますよ』と言って盛り上げたり、犬の実験では犬の気持ちになってしゃべったりしてくれました」(木村) 「器用に立ち回る頭のよさと判断力、タレント性もある。僕はドラえもんのスネ夫だと思ってるんです。スネ夫は嫌みなことを言いますけど、それがいやな感じにはならない。八嶋さんが嫌みを言っても嫌悪感を持たずにキャラクターになっている。稀有(けう)なことだと思います」(塩谷) 深夜1時台の放送にもかかわらず視聴率が5パーセントを超える人気番組となり、翌年にはゴールデンタイムに引っ越してタモリが出演者に加わった。「へぇ」は流行語になり、八嶋の知名度も急上昇した。 八嶋はどんなに忙しくても1年のうち約2カ月、事務所から休暇をもらい、「カムカムミニキーナ」の公演に参加する。出演するだけではなく、段ボールで小道具を作ったり、グッズを発注したりと裏方の仕事も劇団員と同じようにこなす。抜群の知名度を生かして公演の宣伝をするのも大事な役目だ。テレビのスタッフには丁重に扱われるが、自分の劇団ではメンバーの一人にすぎない。 11月上旬、都内の稽古場では、12月5日に開幕するカムカムの新作「鶴人」の稽古が始まっていた。 (文中敬称略)(文・仲宇佐ゆり) ※記事の続きはAERA 2024年12月2日号でご覧いただけます
仲宇佐ゆり