『100日後に死ぬワニ』作者・きくちゆうきが「描くつもりはなかった」続編を描き始めた理由「残されたネズミがどう生きるか、を描くほうが大事だと思ったんです」
2019年12月12日から2020年3月20日まで、日本中が100日間を見守った『100日後に死ぬワニ』。あれから4年、作者のきくちゆうきさんが続編『100日後に死ぬ×(バッテン)ネズミ』の連載を、自身のXで開始した。 連載が始まるお知らせをした投稿はインプレッション数 1896、3.7万(9月11日時点)の「いいね」がつき、早くも大反響を読んでいる。 当初は「描くつもりはなかった」というきくちさんに、どんな変化が訪れ描くことを決意したのか。そのTHE CHANGEに迫った。【第1回/全2回】 ■【画像】『100日後に死ぬワニ』作者・きくちゆうき氏が色紙に描く“ワニくん”と“ネズミくん” 「今日はよろしくお願いします」 そう言いながら差し出す名刺は、キラキラと輝いている。「きくちゆうき」という名前に自画像が描かれた、ビックリマンのレアシール風の、心ときめくキラキラ。「もらった相手は、軒並みテンションが上がるのでは?」と聞くと、はにかみながら控えめに「そうですね」と答える。ほんの些細なことでも「人を楽しませたい」というサービス精神が伝わってくる。 きくちゆうきさんは、4年前、日本中が固唾を飲んで100日間見守った、X(旧Twitter)連載漫画『100日後に死ぬワニ』の作者だ。2020年3月20日、最終話を掲載したツイートは世界のトレンド1位となり、エンゲージメント総数は2億回を超えた。100日目の「いいね」数は日本一。この数字はいまだに破られていない。 「うれしかったですね!。“ここが自分の人生のハイライトだ”と思いました」
「続編が読みたい」という声が多数届いていたが……
2019年12月12日、自身のTwitterに第1話目を投稿した『100ワニ』。主人公・ワニくんとネズミの友情や恋模様、なんでもない日常や悩みを丁寧に描いた4コマ漫画で、必ず4コマ目の欄外に「死まであと◯日」というカウントダウンが書かれていた。 ワニくんはそんな寿命のカウントダウンなどつゆ知らず、無為に1日をすごしたり、意中のバイト先の先輩をデートに誘うのをためらったり。日本中が最期までどうなるのか? と没入し、毎日の更新時間19:00を心待ちにしていた。 そんな物語は、タイトル通りワニくんの死を予感させて、連載開始から100日後に終了した。当時、きくちさんの元には「続編が読みたい」という声が多数届いていたが、その後続編が投稿されることはなかった。 「描き始めたころは、残された者のその後の物語として、"ネズミのその後も描きたいな”と思っていました。どちらかというと、そっちのほうが大事なんじゃないかと思っていました。ネズミがその後、どう生きるか、という物語のほうが……。でも、まったく事実に反することで、最終話を投稿したあとにいろいろと燃えてしまって。”マンガを描いて、どうしてこんなに言われるんだろう”と思い、描きたかった気持ちに蓋をするようになりました」 ーー最終話投稿直後に、予期せぬかたちでフェイクニュースなどがネットやSNSなどで流されてしまう事態に発展してしまいました。 「それでも読んでくださる方には、もし続編を描くなら、ぜひにネズミとワニのその後も読んでほしいと思っていました。でも、精神的に一時はそういう気持ちになれなくなってしまったんです」 そして4年が経過した2024年――。きくちさんの元に、一通のメールが届いた。それは、出版社からのオファーだった。 「“異世界モノを描いてみませんか?”という内容で、“え! 僕が異世界!?”と戸惑いつつ、異世界モノは描けないにしても、とりあえず話だけでも聞いてみようと思い、メールをくれた編集者の方に会うことにしたんです」 すると話は『100ワニ』の続編に及んだ。 「そして話をしているうちに“続編は描かないんですか?”という話になりました。描きたい気持ちに蓋をしていたし、前回、自分の中ではきちんと終わらせたつもりですし、描くつもりはありませんでしたが、それでもネズミやワニの話をしていると、当然、深い愛情もありますし、続編の構想が蘇ってくるんです。それで、“いいきっかけだし、”続編を読みたい“と言ってくれている方もいたし、”描いてみようかな”と徐々に思うようになっていき、ネズミを主人公にした続編を描くことに決めました。だから、その編集者さんとお会いしなかったら続編が形になることはありませんでした。前回は自分が始めたことだったので、自分ひとりで終わらせないとなりませんでしたが、今回は編集者さんらの意見も取り入れつつ描きはじめて、心強さがありますね」