森会長辞任でも院政の公算、組織委「森帝国」は不変
日本独特の“茶番”が続いている。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が「女性がたくさん入る理事会は時間がかかる」などと女性蔑視ともとれる失言を発した問題は、日本国内のみならず世界中のメディアや有識者たちから非難を浴び、重大な国際問題にまで発展する勢いだ。 日本のスポーツ界で“陰のキングメーカー”と崇め奉られる森会長の失言問題は当然のように政界にも波及している。野党からの森会長の辞任を求める声に、森会長の後ろ盾となっている政府・与党の自民党は対応に四苦八苦。菅義偉首相を筆頭に政府トップが、最大派閥出身の元首相で今も権力を誇示する森会長を何としてでもかばおうとしている。時間稼ぎを決め込み、“逃げの一手”でどうにか事態の鎮静化を図ろうとしているのはミエミエである。 ■ IOCの手のひら返しと小池都知事のダメ押し しかしながら当初は「森会長が謝罪したので問題は終了」としていたはずのIOC(国際オリンピック委員会)が朝令暮改のごとく「全く不適切だった」と声明を出し直したことで、森バッシングは歯止めがかかるどころか、もはや制御不能の状況となっている。 17日には森会長とIOCのトーマス・バッハ会長、政府の橋本聖子五輪相、そして東京都の小池百合子知事が顔をそろえ、4者会談が行われる方向で調整されていた。ところが10日に小池知事が「ポジティブな発信にはならない」と出席を拒否。事を丸く収めようとしている政府・与党、組織委幹部らも、いよいよ火消しが出来なくなりつつある。
それでも森会長を擁護する声は与党内で滑稽なほどに根強い。まず二階俊博幹事長が「発言を撤回したので、それでいいのではないか」と森会長をかばって、世を呆れさせた。 さらに同幹事長は蔑視発言そのものについて「そんなこと(後に書面で『そのようなこと』に訂正すると通知)」と言い放ち、これによって辞退者が続出している五輪ボランティアに関しても「どうしてもお辞めになりたいということだったら、また新たなボランティアを募集、追加せざるを得ない」と口にし、森会長に続く失言の連発で火に油を注いだ。 ■ 今なお与党から飛び出す「余人をもって代えがたい」発言 自民党の世耕弘成参院幹事長は「余人をもって代えがたい。IOCとの人脈、五輪に関する知見などを考えたら、この(開催)直前のタイミングで、森氏以外に誰か五輪開催を推進できる方はいるのだろうか。ご自身が会見し、謝罪、撤回、反省の弁も述べた。この件はここで収めて、五輪開催に向けての準備にまい進をすることが何よりも重要だ」などと語り、ツイッターを中心にネット上で批判が集中している。 萩生田光一文部科学相も9日の閣議後の記者会見で「『反省していないのではないか』という識者の意見もあるが、森氏の性格というか、今までの振る舞いで、最も反省しているときに逆にああいう態度を取るのではないかという思いもある」とかなり苦しい擁護論を展開し、メディアの失笑を買った。