「中学生で“ゲイ”に出合った」いま注目のドラァグクイーンが語る男性との結婚と亡き母への想い
“ドリアン”が広がった30代
母の死で「これからは好きなことをしよう、やりたいようにしよう!」と決心、理性が働いて自身を制御してきたリミッターを外したことでドリアン・ロロブリジーダの存在が拡散、拡大したという30代を経て、間もなく節目となる40歳の誕生日を迎える。 「30代は本当にいろいろ、いいことも悪いこともありました。30代の初めに母の死があって、その1年後くらいに父が赴任先のタイの方と再婚することになり、そのタイミングで私の活動が家族の知ることとなってカミングアウトをするところになったりとゴタゴタが続きました」 そのことについてドリアンの父親は「大学を中退したことに比べれば、カミングアウトしたのは全然ショックではなかった。それは僕が日本より多様性を認めている国に長く住んでいた、ということもあると思う」と話す。 「父は頭が堅い人間かと思っていたら、とてもさばけていて、スッと理解してくれたんです。タイでは周りにもたくさんいると言っていたし。勝手に見くびっていた自分が、恥ずかしくなりましたね」 これ以降父親との距離が近くなったそうだ。 「自分が寝坊して家で慌てていたら、たまたま日本へ帰国していた父が『乗ってくか?』と車で送ってくれたことがあって。父は『昔このへんで母さんとデートしたぞ』なんてしゃべって、後部座席には必死にメイクしてる30過ぎの息子がいて(笑)。自分が思っていたより懐が深いことを感じて、尊敬するようになりました」 2020年には会社を辞めてドラァグクイーン専業に。しかしその途端、コロナ禍に襲われた。 「外に出られなくなって、もともと決まっていた仕事も全部飛んじゃって、『さあ、どうしよう?』でしたね。とはいえ世界的に『どうしよう?』という時期だったので、逆に『さあ、今こそ私たちが世に一条の光を照らすわよ!』と。ネガティブな状況からポジティブなことを探し出すのは、わりと得意なほうなので!」 2020年4月7日、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に出された緊急事態宣言は、以降全国へと拡大していった。ドリアンは宣言が出る直前、パソコンに向かって昔のステージ映像を動画サイトへ載せる準備をしたり、ネット上でさまざまな人たちとのライブ配信を始めるなど、家でできることを試行錯誤したという。 「あのころは謎の使命感がありましたね。みんなコロナ禍だし、不安定だし、たぶん自分よりもっとしんどい目に遭っている人もいる……じゃあ、自分たちがやれるものをやろうって。 でもそれが結果的に、世間にドリアン・ロロブリジーダを知っていただくきっかけになりました。コロナ禍でドリアンのYouTubeを見たよ、とおっしゃってくれる方がすごく多かったんですよ」 2023年には映画『エゴイスト』に出演し、ドラァグクイーンではなくスッピン姿で主演の鈴木亮平の友人役を熱演。以降、俳優としても活躍している。 「『エゴイスト』の原作者の高山真さんはプライベートでも仲良くしていただいていたんですけど、映画化の前に亡くなって……。 でも、まさか自分が出ると思っていなかったので、電話で出演依頼があったときは、『あの高山さんの!?』とビックリしすぎて、ベッドの上で立ち上がってしまったくらい(笑)。この作品は、私にとって大きなターニングポイントになりました」