「中学生で“ゲイ”に出合った」いま注目のドラァグクイーンが語る男性との結婚と亡き母への想い
今年、話題になった恋リア番組『ボーイフレンド』(Netflix)のスタジオMCを務め、中村倫也主演ドラマ『Shrink』ではすっぴんでバーテン役を演じ、音楽ユニット『八方不美人』ではドラァグクイーンDIVAとして輝きを放つー。プライベートでは結婚も果たした彼は、これまでどんな道を歩んできたのかー。 【写真】ゲイとしてのアイデンティティーが芽生え始めた高1のドリアン 「皆様ごきげんよう。ドリアン・ロロブリジーダでございます!」 ド派手なメイクと豪華な衣装を身に着けた181センチの長身に、頭には大きなウィッグやヘッドドレス、さらに高いハイヒールを履くことで優に2メートルを超す威容を誇るドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダ。上品に挨拶をした後に「名前が長くて覚えられないと思うので、“おまえ”って呼んでください!」とユーモアあふれるアグレッシブなトークで笑わせ、ゴージャスに歌い踊り、オーディエンスを魅了する。
男性の姿でも、自分の中では何も変わらない
「ごきげんようって本当に便利でいい言葉だなと思って、最近使うようにしているんです。こんにちはにもお別れの挨拶にも使えて、スノッブな空気をまといつつ先制パンチを食らわせることもできる。そしてやっぱり“機嫌良い”って、大切ですからね」 近年は舞台でのパフォーマンスだけにとどまらず、テレビ番組やラジオ番組、俳優として映画やドラマにも出演、化粧を落としたスッピン姿での活動も行い、司会やコメンテーターも務めるなど、明るくポジティブな魅力で人気を集め、活躍のフィールドを広げている。 しかしドリアンは「女装をしても、男性の姿でも、自分の中では何も変わらない」と言う。取材の際もスッピン姿でありながら、手には美しいネイルが光っている。 「所作やアウトプットの仕方を意識的に変えよう、というのはあるんです。なので男装でステージへ出るときは男役っぽく過剰に振る舞いたいし、ドレッシーなときは上品でありたい。でもメンタリティーは変わらないんです。活動の中心にはドラァグクイーンがあって、あくまで看板は“ドリアン・ロロブリジーダ”なんです」 ドリアン・ロロブリジーダこと大竹正輝は1984年12月24日、大学時代にフォークソングのサークルで知り合った両親の間に、6歳上と3歳上の兄がいる三男として生まれた。東京東部の深川で幼少期を過ごし、3歳で西部郊外の一戸建てへと引っ越した。 そのころから着飾って歌い踊ることが大好きで「兄貴のお遊戯会の衣装を着て、家族の前でミニコンサートを開いていました」と笑う。ドリアンの長兄は「小さいころから兄弟の中ではダントツの目立ちたがり屋で、人前で歌ったり踊ったりするのが好きだった」と幼少期の正輝のことを話してくれた。 「兄2人とは性格が全然違っていて、彼らはまじめで、堅~い仕事についています。自分だけ浮いているんですよねぇ。堅い、堅いときてちゃらんぽらん、みたいな(笑)」 その後、小3~小5まで、父親の仕事の関係で家族で香港へと移り住む。ドリアンはこのころからオネエ的なしぐさをするようになったというが、「自分の中のフェミニティが湧き上がってきたというわけではなくて、そう振る舞うと楽しいから、面白いからそうしていただけだと思う」と語る。兄たちは学校でオカマの兄貴と揶揄されたというが、本人は「自分は好きでやっていただけなので、ノーダメージでした」と言う。 香港までは家族一緒だったが、それ以降は父親が単身赴任をするようになり、日本へ帰国して母親と2人の兄との生活となった。中学生となったドリアンは吹奏楽部でテナーサックスを担当する。 「中学までは恋愛感情は女の子に抱いていました。吹奏楽部は女子が多いんですけど、彼女たちとフランクに接していたので、男子からは『大竹って女たらしだよな~』なんて言われたり、告白されることも何度かありましたね。目立ちたがり屋で、キャッキャしていました」 いじめに遭わなかったのかと聞くと、ドリアンは「なかった」ときっぱり答えた。 「でも中学、高校で下駄箱の靴を誰かに3回くらい捨てられているんです。でもそれは自分が目立っていたことへの妬みからの行動だと思ったので、『まあ、そうだよね~』と納得して(笑)。もしかしたらいじめだったのかもしれないけど、そうは思わなくて。私には常に友人がいたので、学校では楽しく過ごしていました」 このドリアンの魅力である明るさやポジティブ思考、自己肯定感の高さは母譲りだという。 「私はマザコンなので、母の影響がとても大きいんです。怒られたことはたくさんありますけど、いろんなことを肯定してくれて、否定されたことがなくて。だから今の自分の人格をつくってくれたのは、母だと思うんです」 ちなみにサックスを選んだのは母親の助言だったそうだ。 「母は明るくて、歌うことが大好きで、ずっと合唱をやっていたので、吹奏楽をやりたいと相談したら『あなたは目立ちたがり屋だから、サックスがいいんじゃない?』とすすめられたんです。そうそう、学生時代に家に遊びに来た友人に『大竹の母ちゃんって……本当に大竹の母ちゃんだよな』と言われて(笑)。自分としてはいつも見ている普通の母なので『何のこっちゃ?』とは思ったんですけど、似ていると思われたことはうれしかったですね」