1994年から打撃タイトルとなった「最多安打」のあれこれ
巨人とソフトバンク、両リーグの優勝が決まり、今後の注目はクライマックス・シリーズの出場権をかけたパ・リーグの2位争い、そして個人タイトル争いになるだろう。 最多安打が打撃タイトルとして制定されたのは、1994年のことだった。この年、イチロー(オリックス)が210安打を記録して日本中の注目を浴びたことがきっかけになったと言われている。 最多本塁打と最多打点のタイトルは最初から重要視されながら、なぜ最多安打のタイトルは長らく認められていなかったのだろう。打撃3部門において安打のタイトルは一つ、それはおそらく首位打者が相応しいという判断だったのかもしれない。 それはともかく、タイトルに制定される以前も含めれば、最多安打を最も記録した選手は長嶋茂雄(巨人)で10回に及ぶ。これに続くのはイチローの5回。首位打者7回の張本勲(東映ほか)は3回と意外に少ない。 最多安打の本数では、セ・リーグはマートン(阪神)が2010年に記録した214本、パ・リーグでは秋山翔吾(西武)が2015年に記録した216本がトップ。それでも両者ともに首位打者にはなっていない。本数と率ではやはり違うということだ。 3年連続で最多安打を記録した選手は過去に6人。長嶋は6年連続(1958~63年)、イチローは5年連続(1994~98年)、あとの4人は3年連続で、榎本喜八(毎日ほか/1960~62年)、田尾安志(中日ほか/1982~84年)、ブーマー(阪急ほか/1984~86年)、そして秋山翔吾(西武/2017~19年)の顔ぶれだ。 この中で面白いのは中日の田尾だろう。なぜなら3年連続でリーグ最多安打を達成しながら、翌年の春季キャンプ前に西武へとトレードされたからだ。選手会長として口うるさく、フロントに煙たがられていたのが理由だったが、これだけの成績を残しながらチームを放出されるのは何とも切ない。 現在(10月31日終了時点)の最多安打は、セ・リーグが大島洋平(中日)で138安打、パ・リーグが吉田正尚(オリックス)と柳田悠岐(ソフトバンク)で141安打。残り試合もわずかだが、2020年の最多安打のタイトルは誰の頭上に輝くだろうか。 写真=BBM
週刊ベースボール