児童婚、DV、酸攻撃…中東イエメンの女性虐待の実態
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【2月20日 AFP】12歳で結婚し、16歳で離婚。その後、酸を浴びせられ容姿が変貌した。アノウド・フセイン・シェリャン(Al-Anoud Hussain Sheryan)さんの半生は、戦乱と貧困に苦しむイエメン社会における女性虐待の驚くべき実態を示している。 19歳となった今、彼女は暴力的な元夫から受けた虐待の日々について語り始めた。ドメスティックバイオレンス(DV)がほとんど表沙汰にならないイエメンでの異例の証言だ。 「彼は私の髪をつかんで放さず、笑いながら酸を浴びせました」。アノウドさんは昨年10月に受けた暴行についてAFPに語った。ベールをかぶった顔にはひどい傷を負った。体にも深い傷痕がある。 鎖でつながれ、何度も殴られる結婚生活だった。「地獄の経験でした」 アノウドさんの父親が亡くなり、再婚した母親は、娘の結婚相手を急いで見つけた。「母は私を守ろうとしたんです」。だが、アノウドさんは4年間、「奴隷」として暮らすことになり、揚げ句追い出された。 姉の元に身を寄せたアノウドさんは、看護師の訓練を受け始めた。ところが、元夫は復縁を望み、彼女がそれを拒否すると復讐(ふくしゅう)に出た。 アノウドさんはかつて自分が勤務していたクリニックへ運ばれた。現在は、体の損傷を部分的に修復するために3回は必要だという形成手術を待っている。 担当医師のムタワカル・シャハリ(Moutawakal Chahari)氏は、複雑で費用がかさむ治療だと述べた。アノウドさんが受けた応急処置の支払いさえ済んではいない。 さらにシャハリ医師は、つらい体験がアノウドさんに残した「修復不可能な精神的影響」も懸念した。 酸攻撃を受けたアノウドさんは元夫を訴えたが、元夫は姿を消し行方知れずだ。アノウドさんは人道支援組織や行政サービス、草の根NGOなどから経済的な支援を受けたいと望んでいる。「警察や裁判所は、こんなことをした犯罪者を罰してほしい。私は自分の青春や勉強、仕事を取り返したい。人生を取り戻したい」 ■140万人の少女が15歳未満で結婚 児童婚はイエメン社会の一面だが、この国を飢餓にまで追い詰めた6年にわたる内戦により、さらに一般化した。それに伴い、女性に対する暴力も「著しく増加した」とイエメン女性ユニオン(Yemeni Women’s Union)のタイシール・ワリド(Tayseer Walid)氏がAFPに述べた。「生活が苦しいため、家族の中で子ども、特に女子にかかる費用を省くことになるのです」 内戦勃発後、成人女性および少女を擁護する団体の多くが閉鎖した。生き残った団体も法律面、医療面、精神面での莫大(ばくだい)なニーズを満たす資金が不足している。 2013年に実施された国連(UN)の調査によれば、24~32歳のイエメン人女性のうち3分の1が18歳未満で結婚していた。しかも、9%は15歳未満での結婚だった。 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)の推計によると、イエメンで既婚の18歳未満の少女は2020年に約400万人に達している。うち140万人が15歳未満だ。 ■ 救いを求める叫び また国連人口基金(UNFPA)は2020年の報告で、イエメンでは推計260万人の女性および少女が「ジェンダーに基づく暴力」の危険にさらされていると警告した。 新型コロナウイルス感染拡大の渦中で、ロックダウン(都市封鎖)が大きな緊張を引き起こし、「DV事例が増加している」と同報告は指摘した。 反政府武装勢力フーシ派(Huthi)と暫定政府との間で激化する戦闘により数万人が死亡し、数百万人が行き場を失っている。その結果、アラビア半島の最貧国と呼ばれるイエメンで、世界最悪の人道的危機が起きていると国連は指摘。今年は約1600万人が飢えに苦しむと懸念している。 女性に対する暴力は人道的危機の見えない一面だ。国連開発計画(UNDP)によると、イエメンでは2015年以降、女性および少女に対する暴行が63%増えている。 UNDPでは対応策の一つとして、日本政府の支援を受け、携帯アプリを通じて被害者を保護支援サービスに案内している。 映像は1月28日撮影。(c)AFPBB News