「志村は今、そちらにお邪魔していますか?」愛弟子が“六本木のクラブ”で師匠を探し続けた夜
ちょうどいい長さの「鼻に入れる棒」も付き人が作成
現場では、コントで使う小道具の確認もします。たとえばツッコミで叩くときに使う新聞が必要なら、3枚用意します。3枚だとあまり痛くないし、音もちゃんと出るからです。 同じように、安来節やドジョウすくいなどで鼻に入れる棒も、長さが決まっています(僕の中指の付け根から第2関節まで)。これを用意するのも僕の仕事で、割り箸を削って紙ヤスリをかけて作ります。ちょうどいい長さにしないと鼻に入れたときに痛いのですが、最初はうまく作れず、 「痛ってえな……。長さが全然違うだろうが」 などとよく怒られていました。
志村さんがお店にいる間、リムジンの中で待つ
仕事が終わると、志村さんは食事や飲みに行きます。行き先はたいてい麻布十番か六本木でした。もちろん運転は僕です。 志村さんがお店にいる間、車の中で待ちます。六本木のクラブに飲みに行くと、お店から出てくるのが夜3時くらい。たとえば夜9時にクラブに入って夜2時くらいまで帰ってこないと、志村さんの行きつけのクラブの何軒かに電話をかけます。 「志村の付き人です。志村は今、そちらにお邪魔していますか?」 そう聞くのです。 なぜか。志村さんはいつもクラブをハシゴしていて、最終的にまったく違う場所で飲み終わるからです。僕は2時あたりからあちこちのクラブに電話をかけ、志村さんの居場所を確認し、近くに車を停めておくのです。 「今、〇〇にいる。そろそろ帰るよ」 という連絡が来たとき、そのお店の近くに車を停めておけば、 「すぐ近くにいますので、お好きなタイミングで大丈夫です」 と答えられます。
休みの日も「買い物に行く」と言われれば駆けつける
これは「なるべく気持ちよく帰っていただけるように」という配慮ですが、「10分ほどかかります」などと答えたら、またもう1軒どこかに飲みに行ってしまうんじゃないか、という恐怖感もありました(どちらかというと後者のほうが大きかったです)。 志村さんを自宅まで送ったら、付き人としての僕の一日は終わります。 休みは原則としてありません。志村さんが休みの日でも「買い物に行きたい」とか「飲みに行く」と言われたら、すぐに駆けつけます。24時間365日、志村さんに合わせた生活サイクルです。 僕は当時、志村さんの自宅から自転車で10分ほどのところに住んでいました。アパートの2階の部屋です。 今しがた書いたように、志村さんが休みの日でもいつ呼ばれるかわかりませんから、アパートで待機します。夜9時になって連絡がなければ、こちらから電話をかけ、「今日は出かけますか」と聞きます。「出かけない」と言われたら、ようやく自分のプライベートタイムになりますが、「まだわからない」と言われることもたまにありました。 そのまま夜10時くらいまで待機して、「今から出かける」と言われたら、僕は中古で買った5000円の自転車で出かけ、1000万円以上するリムジンを運転して麻布十番や六本木に行き、また5000円の中古自転車に乗ってアパートに帰るのです。