カワサキ「MEGURO K3」発売のウラで繰り広げられる川崎重工と特許庁の激しい攻防 じつは商標登録してなかった!?
戦前からあった日本の二輪車メーカー『目黒製作所』
戦後、二輪車メーカーが乱立したのち、現在の4メーカー寡占体制の流れになっていくなか、倒産の危機にあった名門「メグロ」を吸収合併したのが川崎重工業(以下、カワサキ)でした。 【画像】カワサキとメグロの懐かしいロゴを見る(11枚) カワサキはメグロ合併後、メグロブランドの代表モデル「メグロスタミナK」にルーツを持つ「Z1」や「W1」シリーズを開発。現在の「Z」「W」にもその潮流は脈々と受け継がれています。 そして満を持して2021年2月に発売されることになったのが「MEGIRO K3(メグロ・ケースリー)」です。 ところが、じつはこの「メグロ」「MEGURO」のネーミングを使用するにあたって紆余曲折がありました。一般的にメーカーは自社ブランドを守るため、社名や商品、車名の商標登録を行いますが、カワサキは最近まで「メグロ」「MEGURO」の商標登録をしていなかったのです!
「メグロ」を巡るカワサキと特許庁の攻防、温度差がスゴイ!!
メグロの雰囲気を継承するバーチカルツインの「W650(ダブル650)」が発売されたのは1999年でした。2011年には「W800(ダブル800)」にモデルチェンジし、2019年の東京モーターショーでは「W800」をベースにして「メグロ」と名付けたモデルが出るのではないか? そう思わせる演出が行われました。 モーターショーはニューモデルのお披露目の場なのに、ブースの表側には往年の名車、カワサキ「メグロK2」(1965年式)と「650-W1」(1967年式)が展示されたのです。ニューモデルとして再登場した「W800」は、あえてブースの内側に展示されました。 この演出により、次期「W」にはメグロの名称が使われるのではないかと思われましたが、そこには、じつはカワサキは「メグロ」「MEGURO」の商標を獲得できていなかったという大きな障壁が立ちはだかっていました。 日本で「メグロ」「MEGURO」に関係する商標を持っているのは、塗料などのメーカーである「メグロ化学工業株式会社」と、電子計測機器のメーカーである株式会社目黒電波測器の存続会社、「株式会社計測技術研究所」で、それぞれ自社ロゴマークを「メグロ・MEGURO」の呼称で登録しています。ほかにも、個人で「メグロ発動機」の商標を取っている人もいます。これらは商標の商品区分に「二輪自動車」なども含まれていました。 商標とは、言葉や文字、ロゴマークなどを指しますが、特許庁に商標出願し、商標登録されると勝手にほかの人や会社が使えなくなります。このため、自社で製造する予定がなくても、広範囲の区分を登録するのが普通です。 これを踏まえて、カワサキはメグロの名称をバイクで使うため、2019年1月から「メグロ」「MEGURO」の文言やロゴ、かつてのメグロ時代に使用していた「MW(メグロワークス)」の標章の商標出願、そして他2社のMEGUROマーク(会社のロゴ)に対する二輪自動車等の指定商品登録の取り消しを出願しています。 メグロはバイクファンなら周知の二輪ブランドですが、今回のカワサキの商標登録にあたっては、特許庁から拒絶査定の審決を受けるなど、攻防が繰り広げられています。 たとえば、片仮名でデザインした「メグロ」のロゴに関しては、特許庁審判官から「片仮名文字をややデザイン化した書体で表してなるところ、そのデザイン化の程度は格別特異のものとはいえない」「普通に用いられる域を脱しない程度に表示してなるものと認められる」などと、デザインセンスを問われています(とほほ)。