第163回直木賞受賞会見(全文)馳星周さん「G1レースを勝ったように喜んでくれて」
新型コロナの感染拡大をどう見ているのか
読売新聞:あともう1点ちょっと伺いたいんですが、コロナの関係でいうと、馳さんが出された近刊で、藤原4兄弟、『四神の旗』で、あれはコロナじゃなくて天然痘の話が出てきましたけれども、4兄弟がみんな亡くなるっていう、そろって亡くなるみたいな話が出てきますが、やっぱりコロナについてあらためてどういうふうに。今、まさにコロナがこれだけ猛威を振るって。 馳:基本的には、コロナっていうかSARSとか、ああいうのも、エボラとかもそうですけれども、人が経済を追い求め続けてた結果、アフリカの密林だとか東南アジアの密林とかでひっそりしてたウイルスが外に出てきたと僕は思ってます。ウイルスに罪はないですよね。たまたまそれが出てくるきっかけっていうのは、やっぱり人間の貪欲さだと思っているので。 なんだろう、本当はたまたま、昔『光あれ』っていう短編を、東日本大震災の前に書いたら、実際そういうのが起こって、原発事故が起こったりとか、今回はコロナが始まるずっと前に藤原4兄弟みたいな話を書いて、その藤原4兄弟は最後、天然痘で死ぬっていうのは分かってたんですけれども、書いたら、実際、現実世界がそれに追い付いちゃって、なんなんだろうな、俺はって思うところはあるんですけれども、意図しているわけではないので、小説って面白いなと思います。自分で書いていながら。 読売新聞:ありがとうございました。 司会:ありがとうございました。じゃあもう1問、お願いいたします。
『不夜城』で取ったほうが良かったか
報知新聞:報知新聞の中村です。馳さん、おめでとうございます。 馳:どうもです、ありがとうございます。 報知新聞:97年の『不夜城』で初めてノミネートされた際、新宿【****** 01:02:44】のほうで末席にいさせていただいた者です。 馳:ああ、そうですか。 報知新聞:それから23年半たちまして、馳さんという人は、ベストセラーにもなり、社会現象にもなった『不夜城』でとっとと取ってしまっていたほうが良かったとか、直木賞を。今、23年半たっての、今取れたからこそ、それだけ喜ばれているのか、お聞かせください。 馳:いや、もう、なんでしょうね。直木賞を受賞するかしないかっていうことを考えて小説を書いてきたわけではないので、なんだろうな。今回いただいたことはとてもうれしいんですけれども、直木賞を取ることが目標で小説を書いているわけではないので、例えば、今までいただけなかったことに関しては、たぶん自分が未熟だったんだろうし、今回いただけたことに関しては、もうデビューして二十何年になるんですけど、二十何年間、一生懸命小説に向かい合ってきたことを評価されたのかなと思ってます。ただ、あのとき取っていればとか、そういうことを考えたことはないですし、そういうことを考える人は小説家になってはいけないと思います。 報知新聞:分かりました、ありがとうございます。 司会:ありがとうございました。よろしいでしょうか。長い1日をありがとうございました。これにて会見のほうを終了させていただきます。馳星周さん、直木賞受賞、大きな拍手をもって。ありがとうございました。 馳:疲れた。 男性:終わりでしょう? 終わりでしょう。はい、終わりです。 複数:おめでとうございます。 司会:退場の前にすみません、退場のご案内をしますので、ちょっとそのままお待ちください。 (完)【書き起こし】第163回直木賞受賞会見