弘前→むつ 遠隔ロボット手術実験/国内初、医師不足解消に期待
弘前大学医学部付属病院(青森県弘前市)は22日、むつ総合病院(むつ市)と高速通信回線で結び、遠隔ロボット支援手術の効果を確かめる実証実験を人工臓器を使って始めたと発表した。病院間の遠隔手術実験は国内初。日本外科学会を中心に各省庁や民間企業が参加する大規模プロジェクトで、来年度中に遠隔手術のガイドラインを策定する。遠隔手術が実現すれば、地域の医師不足の解消、地方の医療水準向上につながると期待されている。 21日から始まった実験は3月1日まで実施。機器操作に習熟した弘大病院の医師が、約150キロ離れたむつ病院にあるロボットアームを映像を確認しながら操作し、人工腸管などを糸で縫合した。むつ病院の医師は、機器の動作状況などを確認した。実際の操作とロボットの動きに時間的な遅れはほとんどなかった。 22日、弘大病院で開かれた会見で、同学会の森正樹理事長(九州大大学院教授)らは、遠隔手術によって、地域住民は遠くまで通院しなくても済み、体力的・経済的な負担が少なくなる-と説明した。 弘大大学院医学研究科消化器外科学講座の袴田健一教授は「新しいテクノロジーで質の高い外科医療を提供できるほか、地域の病院にいる若手医師の育成にもつながる」、福田眞作学長は「近未来の遠隔医療のモデルケースになる」と期待した。 むつ病院は、年間約800件の全身麻酔手術を実施しているむつ下北医療圏の中核病院。弘大から医師の応援を受けているが、車で3~4時間かかり、特に冬場の往来は困難となっている。 むつ市の宮下宗一郎市長(一部事務組合下北医療センター管理者)は「下北医療圏域は県内でも医師が少ない地域。高齢化率も高く、通院を負担に感じている人もいる。遠隔手術が実現すれば、患者の負担、医師不足、地理的な問題の解決へ向け大きく前進する」と語った。 国は2019年の「オンライン診療に関する指針」に遠隔手術を対象に加え、世界に先駆けて遠隔手術の実施に向けた環境を整えた。プロジェクトでは4月以降、九州大と北海道大を接続した遠隔実証研究も行い、来年度中に手術のガイドラインを策定する。