しんどい現実に向き合えなくても。他者を知る手段としてのドキュメンタリー
まずは知ることからでもいいと思うんです。「こういう人がいるんだ」と知ることは、自分と違う他者を承認することでもある。こんな時代だからこそ、まずはそれがすごく重要なんじゃないかなと思うんですよね。 「現実に向き合う」って、なかなかハードルの高いことですよ。あまり深く考えず、とりあえず観てみる。もし合わなかったら途中で観るのを止めても構わないので。
── まずは自分と違う他者を知ることから。日々のニュースやSNSへの触れ方にも通じる、大事なヒントをいただいたように思います。最後に、久保田さんは今後、日本のドキュメンタリーがどんな風に変化していってほしいですか? ドキュメンタリーが批評の対象ではなく、「体験するもの」として広がってくれたら嬉しいですね。やっぱりドキュメンタリーの良さって現地に行かずとも体験できて、社会問題を知るきっかけになることなので。その中で、自分の作品が他者の世界を知るきっかけのひとつになってほしいです。 また、個人的に映像の力を信じていますが、万能ではないとも思っているので、より多くの人に観てもらうためにも、こうした取材だったり、全国で自主上映会を開催したりと映像制作以外の活動も積極的に取り組んでいきたいです。
取材・執筆:吉野舞 取材・編集:友光だんご(Huuuu) 撮影:本永 創太