美しすぎる外来種。持ち込んだのは誰?日本の侵略的外来種ワースト100に名を連ねる。
なにかと、外来種というワードを聞くと嫌悪感を示す人が多い昨今ですが、今回はタイリクバラタナゴという外来タナゴを例にとって、少しだけ外来種というキーワードについて本気で考えてみたいと思います。 【画像】美しすぎる外来種、タイリクバラタナゴ
日本にこの『タイリクバラタナゴ』を持ち込んだのはだれだ?
タイリクバラタナゴというのは、タナゴの1種類です。名のとおりバラのように美しい色合いの個体で、釣りの対象魚としても観賞魚としても人気の小さな魚です。 国立環境研究所の情報によると、「食用にしようと移入されたハクレンの種苗に混入して関東に持ち込まれ(1942年)、そこから霞ヶ浦などで養殖されていたイケチョウガイなどの拡散により日本全国に分布したと考えられる(1960年頃)」。と、ざっくりまとめられています。 元々の原因は、食用を意識して移入されたハクレンに紛れ込んだという、この手の外来種あるあるな持ち込まれ方です。今でこそ、どんな利用であろうとその土地の環境に適した生物を持ち込むと、生態系に影響があるという知見は世界的にも一般化していますが、昔はそうでなかったことがわかります。 結局、このタイリクバラタナゴはそのきっかけ以来、さまざまな方法で日本全国に拡散し、現在では『外来生物法で要注意外来生物に指定された.日本の侵略的外来種ワースト100』に名を連ねています。 釣りのメディアとして『さまざまな方法』でとボカすのも恣意的ですので、どんな方法で拡散していったかも少し明記しておきましょう。 ・最初の原因はハクレンでしたが、移入による繁殖により、その水系からさまざまな養殖魚の運搬により拡散(産卵床になる貝などによる流出含む) ・釣り愛好家による拡散 ・アクアリウムファンによっての拡散 主要因としてはこういったところになると思います。アユなどは日本の川の代表魚的に扱われはしますが、結局、養殖した魚を全国各地に放流するコトでその資源を維持している側面があります。皮肉なものですが、在来魚の資源維持を目的に放流した魚に混じって拡散していくという『原因』は見過ごせるものではありません。アユ、ヘラブナ、ヤマメ、イワナなどの制御、稚魚放流に混じって、本来、そこにいなかった魚たちが結果的に生息域を広げていった。という事実は認識すべきです。 鳥が運ぶだなんだという、細かいロジックもありますが、細かなコトは挙げるとキリがないので、ちょっとまた別のお話とさせていただきます。 昨今、各地で広がっているブラックバス、最近ではコクチバスの問題をよく耳にしますが、『釣り人などが違法に広げていった』というミスリードがやや多い気はします。 ある意味、確かに間違いではないですよね。そういった放流をした直接的にした人も少なくはないでしょう。ただ、先ほどもとりあげた、在来魚の歪な放流もかなり拡散の大きなウエイトになっていることを理解すべきです。アユやヘラブナ、ナマズ、イワナにヤマメ。こういった釣りファンを楽しませる放流により拡散していますので、間接的には、放流をアテにしている『お前ら釣り人の責任』と言われれば、結論そうですが、一部の釣りファンによる大罪と断ずるには、少し無理がある気がするのです。 筆者の所属している漁業組合の魚の放流光景。対象魚はアユ。遠方の養魚場から買い入れて専用の車で移送。そこから、バケツリレーです。ここに混ざっている外来魚の稚魚をチェックして排除する。までは、なかなか難しいのが事実。もちろん、混ざらないように買い入れの段階でチェックはされるのですが完璧ではありません。 とはいえ、在来魚のアユやイワナ、ヤマメなどの河川における資源維持を意識すると、日本の9割以上で放流に頼らねばならないのも事実です。じゃあ、なぜ、それら在来魚が放流魚に頼らねば資源維持ができない原因ってなんなのでしょうか? 釣り人のせい? 漁師のせい? それもあるかもしれません。もっとも大きな原因は、『環境』と言いたいところですが、いやいや、そこもデカいですが、結局のところわれわれの『無知』や『無関心』が原因ではないでしょうか。 何が言いたいか。原因をより緻密に紐解けば、効率の良い解決策・方法も見えてきます。できるできないは置いといて少し列挙してみます。 ・釣り人の違法放流をさせない、モラルのない行為は徹底的に排除する! ・在来魚放流時の環境チェック。外来魚が稚魚として混じってないか、時間をかけてチェックする! そういった種が混ざる環境で育てていないかを確認する。 ・放流する種はその水系のものかどうか? そうでない場合はどすするのか。 ・放流ではなく、環境の改善で資源を回復する。 あくまで1例です。原因を『釣り人の違法放流』にだけ絞って対策したところで、根本的な解決にはならないと思うわけです。では、いまいちどタイリクバラタナゴの話に戻ります。 魚本来の繁殖力を最大限に活用し、資源を維持する。これ、釣り人のためにやっていると思われがちですが、河川環境の維持と言う漁業組合の仕事は、『釣り人のため』だけに行なっているコトではありませんのであしからず。