ノーベル生理学医学賞 大村智氏が着目した「放線菌」とはどんな微生物?
■放線菌を“信じて”
ここまで、放線菌から薬を開発する方法について、紹介してきました 。大村博士は放線菌がもつ力を巧みに利用して、多くの人を救う薬を開発しました。私は、今回の受賞を聞いて、ある先人の言葉を思い出しました。発酵学の世界的権威であった故・坂口謹一郎博士は「微生物にお願いして裏切られたことがない」という言葉を残しています。その精神は、大村博士をはじめとする日本の研究者に脈々と受け継がれています。大村博士がおっしゃるように、微生物に対して謙虚な気持ちで向き合えば、きっと今後も私たちの役に立つ贈り物を与えてくれるはずです。
◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 志水正敏(しみず・まさとし) 1986年、熊本県生まれ。温泉に生息する細菌の研究で、東京大学大学院農学生命科学研究科を修了。2013年より現職。