弱体化した? 国連の役割は終わったのか
安保理を舞台に大国が衝突
内戦では一方の当事者が全面的な「被害者」になることは少なく、コソボでもアルバニア人によるセルビア人襲撃は報告されています。しかし、欧米各国の政府はメディアを通じて高まった世論に押され、自らが「被害者」と認定したグループを支援するため、安保理決議を回避してでも、「人道」を掲げて軍事介入を行ったのです。 これに対して、中ロは国内にやはり少数民族問題を抱え、その人権状況などが欧米から批判されています。この背景のもと、コソボやその後のイラク(2003)で安保理決議なしの軍事介入が行われたことは、中ロの欧米に対する警戒感を強めました。 そのため、特に2000年代半ば以降、原油価格の高騰でロシアが急激に経済成長し、さらに中国が世界第二の経済大国になったこともあり、中ロは頻繁に欧米と対立するようになりました。しかし、それは結果的に、安保理がほとんど機能しない、冷戦時代と似た状況を生むことになったのです。
国連は今後どうなる?
その歴史が示すように、国連安保理は大国の利害が衝突する場です。そのため、現代の様々な問題に関しても、中立公正な役割を期待することは困難です。 ただし、国連、特に安保理決議に代わるほどの正当性をもった決定が、他にないことも確かです。したがって、各国は今後とも行動を起こす場合に国連を利用しようとし、それによって安保理での対立が鮮明になると考えられるのです。 (国際政治学者・六辻彰二)