「体育館」から受けた衝撃――プロバスケプレーヤー千葉慎也を生んだ光景
体育館--。この言葉を聞くと、頭に浮かぶ光景は人によって異なるだろう。体育の時間や部活、卒業式といった学生の時の思い出、投票や地域の集会などのイベント風景。もしくは、床近くにある小窓を挟んで交わした友人との会話や、天井近くに挟まったボールを取ろうとしてボールを投げ合った、学生時代の日常のふとした景色かもしれない。 プロバスケットボールプレーヤーにとって体育館は「職場」だ。試合ではプレーを披露する場として、試合以外の日は己を磨く練習の場として。プロに至るまでの過程も含め、人よりも多くの時間を体育館の中で過ごしている。 プロバスケットボールB3リーグ、岩手ビッグブルズに所属する千葉慎也選手もその一人だ。プロバスケットボールプレーヤーとして、1日8時間をも越える練習時間。その中での大半を体育館で過ごす。しかし、印象に残る体育館のエピソードで真っ先に浮かんだのは、「体育館にいるだけで楽しかった」と語る小学生時代、バスケを始めたミニバスケットボールスポーツ少年団の頃の思い出だ。
『バスケに関わる仲間と一緒に過ごす場所』だった体育館
学校が終わりチャイムが鳴る。ポケットに潜ませたお小遣いを片手にまず駆け込むのは駄菓子屋だ。お菓子を仕入れ、次に走って向かうのは体育館--。そんな少年時代を千葉は過ごしてきた。そこに集まってくるのは少年団の仲間たち。しかし、集まってもバスケを始める訳ではない。当時流行っていたゲームの話をしたり、ステージに上って遊んだり。体育館は仲間たちと遊ぶ場だった。 「(少年団の)練習開始の3時間前位には体育館に来ていました。みんなと練習時間までずっと鬼ごっこをしたりして、練習が始まるころにはもうヘトヘトになっていました。だから練習自体には全然集中できなかったりもして。でも、とにかく楽しかった。バスケ自体もですが、バスケを一緒にやる仲間たちと一緒にいることができる空間、というのが凄く楽しくて」
『自分の存在価値を示す』場所へ
楽しい場所だった体育館。それが変化をしたのは高校時代だった。千葉が入学したのは岩手県立盛岡南高等学校。岩手県特別強化指定校に認定される県内有数の強豪校だ。バスケットボール中心の生活、当たり前に勝利を求められる環境。1学年上には、後に日本初の高卒プロ契約選手となる川村卓也(現:シーホース三河)らをも有するチームの中で、自分がどう貢献するか、を常に考えるようになっていた。 「『楽しい』から『勝ちたい』に気持ちが変わる中で、チームに対して何とかして自分の力を出せないか、というのばかりを考えていました。色んな苦しい思いもありました。なので、はじめてユニフォームをきて体育館のコートに立ち、県で優勝できた時の光景をよく覚えています。どこかほっとしたというか、ようやく(チームの)一員になれたのかな、と」 体育館はいつしか、勝利の為に自分の存在価値を示す場所、仲間と切磋琢磨する場所へと変貌を遂げていた。