パワハラ議員や首長が増加するまさかの背景。「いったい何様?」な“グレーゾーン上司”の言い分と対処法
パワーハラスメントの背景にあるグレーゾーン
先述しましたが、グレーゾーンの中には突出したスキルやアイディアを持っていたり、ずば抜けた集中力で結果を出してきたりした人たちがいます。それらの能力を活かせるような職場環境にいて、大きな成果をあげた結果、出世して部下を持つようになるケースも少なくありません。 しかし、仕事で素晴らしい業績を出すことと、部下への対応や管理能力は基本的には別物であるといえます。特に、グレーゾーンの特性が管理職としての仕事と相性が良くないこともあります。ここでも事例をご紹介しながら、グレーゾーンの上司への対応方法についてお話しします。 グレーゾーンの上司への対応法を知ることは、次のような面でも役に立ちます。 ・グレーゾーンの自覚に乏しい上司について理解を深めることは、自分自身も他の人に似たようなことをしているかもしれないという気づきにつながる。 ・部下が困ったり、悩んだりしてしまう上司の言動はどのようなものなのか、具体的に分かる。 ・知識として対処法を知っていることで、困っている同僚や後輩の相談に乗ったり、然るべき人につないだりすることができる。 ・組織として早々に把握することで、セミナーの企画や然るべき部署への配置換えなどを検討することができる。
ASD特性のグレーゾーンの上司Sさん
Sさん(男性40代)は、某メーカーのマーケティング部の管理職です。彼は、緻密なデータ分析を得意としており、自社製品の売り上げだけでなく、経理部門にも貢献してきました。また、異動などの際には、自身が蓄積してきたデータ分析の手法をマニュアル化するなどして、後任への引継業務も完璧にこなしてきました。このようなSさんのスキルや仕事ぶりを尊敬する社員がいる一方で、Sさんと一緒に仕事をしたことがある人たちからは、「完璧主義」や「彼はいったい何様?」という声があったのも事実です。 実は、Sさんの実績からいえば、もっと早くに管理職に就いていたはずでした。昇進が遅れたのは、Sさんと一緒に働いたことがある上司や同僚から、人事部門に「同じチームにSさんがいると仕事がしにくい」という相談が寄せられたことが大きな要因です。また、本人も管理職になって部下を持つことを望まなかったという経緯があります。 現在、Sさんには数人の部下がいます。部下たちはSさんの仕事ぶりや実績を尊敬しながらも、「こだわりが強い」「冷たい」「パワハラ系」などと陰口をたたいていることが社内にも広まっているようです。筆者は、Sさんの部下数名からヒアリングし、Sさん本人、また人事部門とも話す機会がありました。