南沙良、ミニシアターを巡るVol.6 新宿武蔵野館(後編)
「DVD&動画配信でーた」と連動した連載「南沙良、ミニシアターを巡る 彗星のごとく現れる予期せぬトキメキに自由を奪われたいっ」。第6回は新宿武蔵野館さん(後編)。武蔵野興業株式会社・興行部の西島新さんとの対談の模様をお届けします! 【写真を見る】「邦洋新旧関係なく、面白いと思ってもらえる作品を上映します」と話す西島さん ■「関東近郊では1、2を争う古い映画館です」 南「よく来ます! 先週も、ソフィア・コッポラ監督の『オン・ザ・ロック』を観に来たばかりで」 西島「主演された『もみの家』(20)にも、お客様としていらっしゃいましたよね。そこ(控え室)の壁にサインもしていただいて。その節はありがとうございました(笑)」 南「外観は古いビルですが、館内は意外に明るくてポップですよね」 西島「2016年に耐震補強していますし、それ以外にもちょこちょこリニューアルしてるんですよ。ところで、うちってどれくらいの歴史があると思います?」 南「50年…くらいですか?」 西島「倍の100年です」 南「ええーーー!」 西島「1920年創業です。最初は新宿の別の場所にあって、今のビルに来たのは68年ですけどね。関東近郊では1、2を争うくらい古いんじゃないでしょうか」 ■「新宿の“なんでもあり”なところを生かして作品を選びます」 南「編成をご担当されてるんですよね。どういう基準で上映作品を決めてるんですか?」 西島「シネコン以外の劇場さんって、邦画専門とかアジア映画専門とかカラーが決まっているところが多いんですけど、うちはなんでもあり、ごちゃまぜの劇場です。邦洋新旧関係なく、面白いと思ってもらえる作品を上映します」 南「でも、『面白い』って意味が広いですよね。お客さんによっても違うんじゃないですか?」 西島「銀座は年配客が多めとか、渋谷だと若者が多めといった傾向が普通はあるんですけど。ここ新宿にいる人の年齢層ってすごく幅広いんですよ。だから何かしらおもしろそうな作品であれば、必ずどこかの層に引っかかるんです」 南「私、渋谷や原宿はあまり行かないんですが、新宿はよく来るんです。ガヤガヤしてるけど、なぜか居心地が良くて」 西島「紛れられるから、では?」 南「そうかもしれません。あと、渋谷や新宿は若い人が多くて、私にはまぶしすぎるんです(笑)」 西島「(笑)。今後の映画産業のことを考えると、南さんくらいの年齢の方が劇場に来てくれるのが、いちばんありがたいんです。それで言うと、ヒットする映画は必ず若者まで届きます。まず中高年の男性、その後客層がだんだん若くなり、大学生、高校生まで落ちてくるとロングランが確定。南さん主演の『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(17)も、そんな感じでした」 南「貢献できてうれしいです! 」 ■「中野量太監督のゲリラ舞台挨拶が忘れられません(笑)」 南「恒例の質問なんですが、武蔵野館さんで起こった“事件”を教えてください」 西島「『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)公開中の年始に、中野量太監督から『今から京都から東京に戻るんだけど、舞台挨拶していい?』と連絡がありました。当日の当日だったんですが、お客さんには事前告知なしの急ごしらえでやったんですよ。それは良かったんですが、スタッフが間違えて、監督がしゃべってる途中に突然上映が始まってしまったという(笑)」 南「うわあ!」 西島「上映後にお詫びしましたが、ハプニングもネタになって良かったねという話です(笑)。南さんも舞台挨拶で登壇されますよね?」 南「いつも緊張で生きた心地がしません…。気合いで乗り切るんですけど、毎回どこかしら体に不具合が出るんですよ。お腹が痛くなったり、息苦しくなったり(笑)」 取材・文/稲田豊史 ■写真&ひと言コラム:ふかふかの枕で眠りたい ここ最近は毎朝寒すぎて 布団から脱出するのに時間がかかります。 寒いのはとても苦手ですが、 寒さで染まった赤い鼻の頭はかわいくて好きです。