コロナ禍でもHIV検査を受けて 医療者なしで三密を避ける検査プロジェクトがスタート
新型コロナウイルスの感染拡大は、一般の医療にも大きな影響を及ぼしている。保健所も感染者対応や相談で手いっぱいになる中、普段行なっている検査を中止しているところが多い。HIV(※)検査もその一つだ。「どんな時でもHIV検査を止めていてはいけない」と、名古屋医療センターエイズ総合診療部長の横幕能行さんは、愛知県の協力を得ながら、医療者の対応が不要で、結果はネットの閲覧でHIV検査ができるプロジェクトを12月から2ヶ月間行う。厚生労働省の新型コロナ対策に関する特別研究費を使い、効果があれば課題を改善した上で、全国にも広げる狙いがある。横幕さんは、「三密による感染の不安を解消できて、保健所の負担も減らせるならみんなハッピーなはずです。みんなで知恵を出し合って新しい検査体制を作りたい」と参加を呼びかけている。※HIV(ヒト免疫不全ウイルス)。現時点では治療でウイルスを排除することはできないが、治療薬を飲み続ければ寿命を全うできる。治療をせずにウイルスが体内で増殖し、免疫が落ちることでニューモシスチス肺炎など23の病気を発症した状態をエイズ(後天性免疫不全症候群)という。【BuzzFeed Japan Medical/岩永直子】
新型コロナで逼迫する保健所、HIV検査数は激減
新型コロナウイルスの感染拡大で、対応に追われる保健所の中にはHIV検査を中止しているところも多い。 厚生労働省のエイズ動向委員会の今年4~6月の統計では、保健所などに対するHIV/エイズの相談件数は1万1689件で、昨年同期(3万2498件)の約3分の1。HIV検査に至っては6259件で、昨年同期(2万6529件)の約4分の1まで激減した。 横幕さんによると、名古屋市内の保健所は平日のHIV検査を全て閉め、日曜日だけ外部委託で行うようになった。 「保健所のキャパシティーが新型コロナでオーバーしているということと、当事者がコロナ感染を恐れて検査に来たがらないということがあるようです」 横幕さんが行なっているHIV/エイズ診療でも、これまで新規患者は保健所からの紹介が圧倒的に多かったが、現在では3つのパターンが増えている。 「まず、HIVは感染直後にインフルエンザのような高熱が数日間続くのですが、それを『コロナではないか?』と疑って受診して、HIV感染が発覚するパターンです」 「次に、『いきなりエイズ』とも呼ばれていますが、感染に気づかずに発症してわかるパターン。『なんだか息苦しいな』と思ったら、エイズの一つであるニューモシスチス肺炎だったというようなことがあります」 3つめのパターンは外国人の受診だ。 「航空便が止まって本国から治療薬が届かないと言って、薬の処方のために受診するパターンです。こちらも増えてきています」 しかし、HIVは早期発見がやはり重要だ。 「特にエイズを発症してからわかると、免疫のバランスが既に崩れた状態での治療開始となりますので、その後の経過も大変になります。また、感染を知らずに他の人にうつす可能性も当然増えるでしょう」 「日常的にHIV感染をチェックしていたMSM(Men who have Sex with Men 男性とセックスする男性)が今はチェックできない状態になっています。自身の健康を守るためにも、感染を広げないためにも何か工夫ができないかと思いました」