米政府、ウクライナ支援に200億ドルを供与 ロシアの凍結資産の利益から捻出
アメリカは10日、押収したロシア資産の利益からウクライナに200億ドル(約3兆円)を提供した。主要7カ国(G7)が今年6月に発表した500億ドル規模の支援パッケージの重要な一部。 ジャネット・イエレン米財務長官は、凍結資産を通じて支援を行うことで、「(アメリカの)納税者ではなく、ロシアが違法な戦争の費用を負担することになる」と述べた。 アメリカでは数週間後に、ジョー・バイデン大統領の任期が終わる。ドナルド・トランプ次期大統領は就任後、すぐにウクライナでの戦争を早期に終わらせたいと述べている。 次期大統領は、ウクライナへの財政支援をアメリカの資源の浪費と見なし、新政権下で支援が継続されるかどうかに疑問を投げかけている。 こうした中で米財務省は10日、200億ドルを世界銀行の基金に移したと発表。これによってウクライナが資金を引き出せるようになると述べた。 世界銀行が扱う資金は、軍事目的には使用できない。 ロイター通信によると、バイデン政権は資金の半分を軍事援助に充てることを望んでいたが、これには議会の承認が必要だった。 米政府が提案したウクライナへの610億ドルの軍事援助は、今年4月に承認されるまで、下院での政治的な駆け引きの中で数カ月も遅れた経緯がある。 イエレン米財務長官は10日の声明で、200億ドルが「挑発されていない侵略戦争」に対して自国を守るウクライナに「重要な支援をもたらす」と述べた。 アメリカと欧州連合(EU)を含む同盟国はここ数カ月、2022年にロシアがウクライナに全面侵攻を開始して以降、各国が凍結した約3250億ドル相当の資産をどのように使用するかについて、議論を重ねていた。 G7は今年10月、資産から生じる年間約30億ドルの利息を使用し、向こう30年で500億ドルの信用供与を行うことに合意した。支払いは年末までに開始される予定だ。 EUも同様の方法で、180億ユーロ(約2兆8200億円)以上を拠出することを約束している。 イエレン米財務長官は、G7が提供する500億ドルはウクライナが「緊急サービスや病院、および勇敢な抵抗の基盤を維持するために必要な資源を確保する」ことを目的としていると述べた。 ウクライナ軍はこのところ、前線の各地で後退している。ロシアはウクライナ東部とロシア南西部クルスク州で、占領地を取り戻している。ウクライナ軍は今夏にクルスク州に攻勢をかけたが、戦争の最前線については悲観的な見方を示している。 (英語記事 US gives $20bn to Ukraine funded by seized Russian assets)
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