車両火災対策で「消火器」を積むなら「種類」に注意! 場合によっては人体に有害なものも存在する!!
消火器の消火剤は3タイプに分別できる
火災が起きた場合、初期消火の有効な手段として消火器が使われる。また、この消火器には、火災の種類によって適した消化剤のタイプがあることもよく知られている。そんな消火器のなかで「ハロン1301」の文字を目にしたことはないだろうか。公共の駐車場などで目にした方もいるかもしれないが、消化剤の「ハロン」とはいったいどんなものか、少し詳しく調べてみることにしよう。 【写真】日産がフルレストア! ”超”貴重な戦前の消防車が蘇った(全20枚) まず、火災とは何かだが、火が燃えるには、燃える物が存在すること、火が燃えるための温度が必要であること、火が燃えるための酸素があること、この3つが条件となる。このうち、どれかひとつ以上の条件が欠ければ、火は消えることになる。消火器は、火災を成立させるどれかひとつの条件を取り除くことで、鎮火させる消火道具である。 一般的には、水による消火方法がよく知られているが、これは温度を下げることによって火を消すもので、油や電気による火災などに対しては十分な効果が得られないばかりか、場合によっては火災を拡散、被害を拡大させるおそれもある。そこで考案されたのが、大気(酸素)と燃焼物を遮断する消火方法である。消火剤で燃焼物を包み込み、大気(酸素)と遮断する働きの消火方法だ。 消火剤のタイプでいえば、水系以外の粉末とガス系がこれにあたり、とくにガス系の消火剤は燃焼物と大気を遮断する窒息効果を利用するため、消火物を汚損しないという特徴をもち、精密機器や電気火災の消火に対して有効な消火剤となっている。実際、市販される消火器には、火災の種類に応じた消火の適正が3色の丸印でラベル表示されている。白色が普通火災用で紙や木、プラスチックなどの火災用、黄色が油火災用、青色が電気火災用として示されている。
消化物を汚損しないガス系消火器だけど使用時には注意が必要
さて、ガス系の消火剤だが、不活性ガス型とハロゲン化物型のふたつに分けることができる。最初に触れたハロン1301は、臭素を含むハロゲン化炭化水素のひとつで、消火剤としてはほかにハロン1211、ハロン2402が用いられてきた。このハロゲン化物消火器は、もともと航空機搭載用として開発されたもので、重量容積に対して単位容積あたりの消火力が大きいという特徴があった。簡単にいえば、小型高効率と呼べる消火器で、レーシングカーの車載消火器としても活用されてきた歴史がある。 しかし、これらハロゲン化物は、大気中に放出されるとオゾン層破壊の原因になるとして、1994年以降は新たな生産が中止されている。もっとも、ハロン1301を使う消火システムは、必要最小限の範囲と認められた場合にのみ、まだその使用が認められている。 ハロン1301を使う消火システムが設置された個所、たとえば駐車場などで「ハロン1301、危険」といった表記があるのは、消火時に放出されたガスが、熱によって人体に有害な熱分解生成物を発生するためで、火災発生時には速やかにその場から非難することを促す強い注意の喚起である。ただ、ハロンガスそのものは、直接人体に害をおよぼす性質のものではない。 一方、不活性ガス型の消火システム(消火器)も、ガスの放出によって低酸素状態が作り出されるため、人体にとって危険となるが、これは窒素ガスなどの場合で、二酸化炭素を消火剤に使う場合は、消火効果は別にして、二酸化炭素が直接的に人命に影響をおよぼすため、もっとも注意しなければならない消火システム、消火剤といえるだろう。 場所によっては、火災発生の際、消火効果を高めるため、また延焼を防ぐため、シャッターや防火扉を作動させてその区画を密閉できる設備を持つところも少なからずある。その際、いちばん恐いのは逃げ遅れだ。最悪の場合、避難路が断たれることもある。「ハロン1301使用、注意」の表記は、こうした状況まで含めた警告と受け止めてよいだろう。
大内明彦