退職金を減らす、やってはいけない投資とは? 定年前後のお金の正解
文/印南敦史 退職後のお金の問題は気にかかるところだが、「では、どうしたらいいのか」と考えると、わからないことが多すぎて戸惑ってしまうのではないだろうか。 税理士として日常的に50~60代の定年世代と多く接しているという『定年前後のお金の正解』(板倉 京 著、ダイヤモンド社)の著者も、相談業務のなかで「お金のことはよく知らない」人の多さを実感しているという。 サラリーマンであれば、税金や社会保険などの手続きは会社がやってくれるのだから、当然といえば当然の話ではある。とはいえ会社を退職することになったときからは、ずっと会社に任せていたことも含め、さまざまなことを自分で決めていかなければならない。 そこで本書では、定年前後に自分で決めなくてはならない事項について、「知っておくべきこと」「どうすればいいのかを決めるための判断ポイント」「金銭的な損得の目安」などをわかりやすく、簡潔に解説しているのである。 ところで定年後の生活を考えて、投資を視野に入れている方もいらっしゃるのではないだろうか。ところが、慣れない投資に手を出して、退職金を減らしてしまう人は少なくないのだそうだ。 そこで失敗を未然に防ぐため、著者は本書で「退職金を減らす可能性が高い」投資を挙げている。
利回りが3%以下の不動産投資はNG
退職金としてまとまったお金を手にした結果、不動産投資をする人は多いようだ。不動産業者などもそれを強く勧めるものだが、実際はそう簡単なものではないと著者は指摘している。 「不動産投資」で、一番やってはいけないのは、利回りの悪い不動産を買うことです。利回りとは不動産購入価格に対して、年間いくらの利益を上げられるかの指数です。2000万円で買った不動産が、年間60万円の家賃を稼げば「表面利回り」は3%です。でも実際は、固定資産税や借入利息、管理費や修繕費などがかかるので、「実質利回り」はさらに低くなります。(本書46ページより引用) 不動産投資をやってもいいといわれる「表面利回り」の目安は、6%以上ともいわれている。しかし現在は不動産価格が高騰していることもあり、3%程度やそれ以下の利回りでも買ってしまう人が少なくない。 だが、それはとても危険だというのである。 表面利回り3%では、ローンの利息や管理費、固定資産税などを払っていくと、手取りは期待できないのだ。ひどい場合にはローンを返すために預金を取り崩す人もいるというのだから、考えてみただけでも恐ろしい話である。 もちろん、不動産投資から得られる利益には「家賃による利益」だけでなく、「買った金額よりも高く売れた場合の売却益」もある。ただし不動産価額がバブル並みに高くなっている現在のような時期は、家賃による利回りが低くなるだけでなく、売却益が出る可能性も低くなる。 したがって、不動産投資には不向きな状況であると考えたほうがいいのである。