「2030年までに完全自動運転車」 テスラ追う新興チューリングの戦略は?
NTTグループ2社も支援
現在チューリングは試験運転車の走行により、3500時間ほどのデータを収集している。だが、Tokyo30実現のためには、まだまだデータが足りない。2025年までに、雨や風の強い日、混雑時など、あらゆる条件下でのデータを集めて、この自動運転システムに学習させたいとしている。 先行するTeslaは、既に10万時間を超える大量のデータを収集しているといわれ、チューリングとしてはデータ蓄積の観点からも急いでキャッチアップしたい考えだ。全ての条件のデータを集めておけば、同社が目指すドライバーを必要としない、AIが全ての運転を制御する「End to End」の自動運転走行が可能になる。 今回のシステムの開発にあたって、NTTグループ2社の支援が不可欠だった。ひとつはAIを核とする技術面、もう一つは資金面のサポートだったという。 技術の観点では、GPU基盤の構築を担当したNTTPCコミュニケーションズのAIを軸にした協力が開発を大きく後押しした。工藤社長は「計算基盤の高度利用でパフォーマンスを最大にするためには、GPUのチューニングをしなければなりません。われわれは、NVIDIAとは3年連続でエリートパートナーという強固な関係を維持しており(需要増加で品不足になりがちな)GPUの調達力があります」と胸を張る。さらに「2017年からこのGPUサーバを提供してきた経験に基づく運用力があります。今回のGPUサーバの構築は単純な技術の組み合わせではなく、(複雑な技術が絡み合う)『格闘技』だと思っています」と技術力に自信を示している。 もう1社のNTTドコモ・ベンチャーズは、スタートアップなどに出資や資金支援を行うコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)で、1050億円という国内最大級の運用規模がある。今回はチューリングの資金面を支援するため4月に出資を行った。出資額は非公開だ。 安元社長は「チューリングの中長期的な事業創出を期待して出資を決めました。NTTグループのアセットを掛け合わせながら支えていきたい」と指摘している。資金調達を受けた山本CEOは「今後は海外から、もう一けた上の金額を資金調達したい」と述べ、開発を促進するために、さらなる大きな資金調達が必要になる見通しを明らかにした。