建設アスベスト 被害者救済へ 厚労省が補償制度の創設検討着手
建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けた元建設作業員らによる集団訴訟を巡り、厚生労働省は被害者の救済に向けた補償制度を創設する。訴訟は各地で起こされ、うち2件の訴訟で昨年末と今年1月の最高裁決定で国側の敗訴が確定したことを受けた。原告側は、訴訟を起こさなくても迅速な救済を受けられる基金の創設を求めており、18日に開かれた与党の対策プロジェクトチーム(PT)の初会合で補償の枠組みや内容の検討に着手する方針を伝えた。 石綿を原因とする中皮腫や肺がん、石綿肺などの疾病を負った人に対する救済には労災保険給付と、石綿健康被害救済法、和解手続きによる賠償金の支払いがある。労災保険を受けられない人には石綿救済法で医療費や療養手当などを給付する。平均賃金の約8割が補償される労災に比べ、救済法は月額約10万円の療養手当にとどまり、遺族年金もないなど格差が大きい。 原告側は国と建材メーカーが基金をつくり、被害者に「慰謝料」として補償する制度を提案している。メーカーに対して石綿の使用量に応じて資金を拠出するよう求めているため、提案をベースとした制度設計は難しいとの見方もある。係属中の訴訟の経緯も見ながら詳細を詰める。与党PTの会合で座長の野田毅元自治相は「被害者の方々にはご高齢の方も多い。全面解決に向けて速やかに検討を進めていきたい」と述べた。【矢澤秀範】