会社に壊されない生き方(4)小さな町に見つけた自分の大きな役割
「月3万円ビジネス」が町を活性化させる
月3万円ビジネスとは、毎月3万円程度の売上を目指す小規模なビジネスであり、地方で仕事を創る塾を主宰する藤村靖之・工学博士が提唱する。売上が小さいので競争が生じにくいなどの特徴がある。同氏の著書『月3万円ビジネス』(晶文社)には、バッテリーの再生ビジネスや買い物代行サービスなどの事例が紹介されている。支出の少ない生活スタイルなら、月3万円ビジネスを複数持てば十分生活が成り立つ可能性があるという。 力を秘めた彼女たちが、得意分野の月3万円ビジネスで自信をつかめば、もっと社会にアクションを起こすようになり、ひいては町の活性化につながる、と考えた矢口さんは、2014年11月から杉戸町で「女性のための月3万円ビジネス連続講座」を企画した。 講座では、複数回にわたって、得意分野の再発見、アイデア出し、ビジネスモデルの検討、他の受講者へのプレゼンテーション、情報発信トレーニングに取り組んだのち、最後はマルシェでビジネスを実践する。のちに、近隣の草加市でも同様の講座を開講。それぞれ年に1回開講する両講座から、これまでに合わせて37人が卒業した。
やがて町全体が少しずつ変わる
矢口さんの中学時代の同級生で、出産前までグラッフィックデザイナーとして会社に勤めていた川島有美子さんは、最初の卒業生。講座を経て、1週間分の異なるデザインのTシャツセットを作製、販売するビジネス「7DAYS まかせてーしゃつ」を展開する。 「朝、主婦は忙しいなかで、子供の服選びや着替えに時間をとられる」という川島さんの経験をもとに、曜日ごとに異なる絵柄をデザインしたTシャツをセット化。親が子供のTシャツを選ぶ時間が省けるほか、子供に曜日感覚が自然に身についたり、『○曜日はこのTシャツ』と自分で着替えるような自主性を養う効果なども期待できるという。現在、川島さんは今、矢口さんが代表を務める女性の力で町と人を活性化するユニット「choinaca(ちょいなか)」に加わり、月3万円ビジネスの運営などにも関わっている。