財政審「歳出構造平時化を」 コロナ禍前上回る国債発行を問題視
財務相の諮問機関である財政制度等審議会(会長・十倉雅和経団連会長)は29日、2025年度予算編成などに関する建議(意見書)をまとめ、加藤勝信財務相に提出した。建議では、賃上げや投資の活発化による経済成長を実現する「新たなステージへの移行」が進む中、大型の補正予算編成とコロナ禍前を上回る額の国債発行が続いていることを問題視した。欧米各国と同様に「歳出構造の平時化に向けた取り組みを加速すべき」だとした。 財政健全化に向けては、25年度の国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)黒字化目標達成に向け、「不退転の覚悟を持って予算編成に臨むことが求められる」とした。PB目標達成は「一里塚」であり、予算編成は規模ありきではなく、中身の重点化、施策の優先順位付けの徹底などが必要だとした。 物価上昇への対応として、政府支出においても一定の配慮が必要との考えも示した。一方で、高齢化で増え続けている社会保障給付について「制度改革なく物価高や賃金上昇などを反映すれば、給付費を賄うためには更なる保険料の上昇を余儀なくされる。その結果、現役世代の負担が増加することにも留意が必要である」とも指摘した。 現役世代の負担に目配りしつつ「全世代型社会保障」構築に向けた改革を進めていくことも求めた。政府が進める子育て政策をスピード感を持って効果的なものとするため、施策の実施状況の検証や不断の見直しをしていくべきだとした。 財政審財政制度分科会の増田寛也会長代理(日本郵政社長)は建議手交後の記者会見で、来年度予算編成について「いくつかの政党の主張を踏まえながら予算編成するという昨年とは違う局面だ。財政を拡張させる方向に働いていく可能性がある」としたうえで、「財政がどうあるべきか、多方面の分野の人が集まって政府と違う形で意見を言うことには意味がある」と財政審の役割を話した。【加藤美穂子】