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「ホッとした」介護現場から安堵の声 長野県の特養おやつ死亡事故、逆転無罪

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西日本新聞

「利用者の楽しみ守るのも介護のあるべき姿」

 長野県の特別養護老人ホームでおやつのドーナツを食べた入居者の女性が死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた准看護師に逆転無罪を言い渡した28日の東京高裁判決。有罪とした昨年3月の一審判決後は介護現場の萎縮を招くとの懸念が広がっただけに、二審判決ではあるが、佐賀県内の介護施設でも安堵(あんど)の声が上がった。  「現場が混乱しない判決でホッとした」。鳥栖市のある特別養護老人ホームの施設長は胸をなで下ろした。  施設では食事を自前で調理し、利用者に合わせて固形物を減らしたり、ゼリー状やペースト状にしたりして提供。また管理栄養士や職員を複数配置して事故防止に注意を払うが、利用者の親族や友人が好みの菓子を持参するケースも多い。施設長は「職員間でコミュニケーションを取りながら安全対策を常に考えている」と言う。  同市のあるグループホームでは午前と午後の計2回、おやつタイムを設ける。男性施設長は「利用者同士や職員が交流する大切な時間で、栄養補給以上の役割がある。利用者の楽しみを守るのも介護のあるべき姿だ」と訴える。  唐津市浜玉町の介護事業所「看護小規模多機能むく」では数カ月に1回、希望者をスナックに連れて行く。佐伯美智子代表(46)は「主役は利用者さん本人。安全面を重視しすぎると自由を奪うことになり、本末転倒では」と疑問を呈す。  ただ、どんなに気を付けても事故のリスクはつきまとう。公益財団法人「介護労働安定センター」が介護現場で働く人を対象に実施した2018年度の調査によると、過去1年間に事故になりかける「ヒヤリハット」を経験した人は全体で54・9%。特養だけに絞ると74%だった。  人手不足も深刻で、不足を感じる事業所は約7割に上り、理由では「採用が困難」が9割近くに達した。  鳥栖市の「特別養護老人ホームひまわりの園」の太田秀三施設長(50)は「介護職員の不足に加えて、特養は全国的に赤字経営の施設が多い。リスク管理はもちろんだが、人件費を考えると、少ない職員で切り盛りするしかない」と悩みを打ち明ける。  高齢者福祉に詳しい西南学院大の倉田康路教授は「事故の背景には慢性的な人材不足とそれに伴うサービスの質の低下がある」と指摘。「今後高齢者は増える一方だが、改善されないままではしわ寄せが利用者や働く人に向く。質の高い人材が集まるよう国が政策として取り組む必要がある」と話した。 (星野楽、津留恒星、金子晋輔)

西日本新聞

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