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コロナをサバイバルする米ミュージシャンたち、ロックダウン100日超えの試練

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ダイヤモンド・オンライン

 カリフォルニア州の自宅待機令が3月19日に発令されてから、100日が経過した。バーやライブハウスの閉鎖、コンサートの中止で生演奏する機会を失い、失業状態にあるバンドや歌手たち。彼らがこの3カ月をどう過ごしているのかを追った。(取材・文/ジャーナリスト・長野美穂) 【この記事の画像を見る】 ● 100日超えの自宅待機生活 インスタで生計を立てる歌手の卵  カリフォルニア州のサンノゼに近い、人口約4万5000人の街モーガン・ヒル。そこで、現在ボーイフレンドとその家族と一緒に同居しながら100日超えの自宅待機生活を送っているのが、デミ・レイ・モレノ(26歳)だ。   モレノは16歳のとき、初めてギター片手に1人でサンノゼの路上に立って歌い、道行く人からのチップで一晩150ドルも稼いだことがある美声の持ち主だ。  「じゃあ、リクエストに答えてちょっとだけ歌うね!」  自宅待機令が発令になった3月後半、SNSのインスタグラム上でライブを敢行した彼女は、部屋の壁に貼った日本アニメの『セーラームーン』のポスターの前で、マイク片手にカメラに向かって歌い始めた。  パンチの効いたハイトーンボイスで、今年のグラミー賞授賞式でデミ・ロヴァートが披露した曲『Anyone』を歌い上げる。するとファンたちが、「ヘイ、スーパースター!」「なんて美しい声!」と次々にコメントを書き込んでいった。  「いま、聴衆を前にライブで歌うことはできないから、正直つらい。でも、インスタのビデオを見てくれた人たちが、1ドルや50セントなど少しずつ寄付してくれて、そのお金でなんと袋入りのラーメンが買えた。嬉しいし、本当にありがたい」と彼女は電話インタビューで答えた。

 モレノが自身のインスタグラムに「Venmo」(ベンモ)のアカウントを載せたところ、彼女の歌声を聞いたファンから少額の寄付が寄せられるようになったという。Venmoとは、銀行口座と紐付けられた個人間の送金アプリだ。ファンからの「おひねり」を受け取るのに、最も便利な方法なのだ。  「ありがとう、みんな!でも、ひとり2ドル以上は私に寄付しないでね。みんなだって経済的に大変なときなんだから」と、モレノはファンたちにメッセージを送る。 ● 人気オーディションで勝ち進み 「子守り」の仕事を捨ててデビューをかける  新型コロナウイルスのパンデミックにより、米国の失業保険申請者は4600万人を突破した。しかし、もともと自営業だった彼女に失業保険は出ない。モレノは保育士の資格を持ち、時給20ドルでフルタイムのナニー(子守り)をして生計を立てていた。  サンノゼの裕福な家庭の小学生の娘の専属ナニーとして働く傍ら、自分のバンドで夜や週末にカバー曲などを歌っていた。すると昨年冬、声楽の恩師経由で大手ネットワーク局ABCの『アメリカン・アイドル』という人気オーディション番組から、「ぜひ参加してほしい」と声がかかった。  一次審査で歌手のケイティ・ペリーやライオネル・リッチーらの審査員の前で歌を披露すると、「こんなに上手いのに、なぜ歌手を本業にしないの?」と驚かれ、合格した。番組内で最終選考まで勝ち残れば大手レコード会社からデビューでき、スター歌手の将来が約束されるチャンスだ。  だがそれには、全米各地で開催されるオーディションの収録スケジュールを毎週必ずこなさなければならず、フルタイムのナニーの仕事は辞めなければならなかった。「26歳でやっと掴んだビッグチャンス。賭けてみようと思った」とモレノ。そして審査に勝ち進み、最終20人の枠まであと一歩というところで、惜しくも落選してしまった。  彼女が『アイドル』のオーディションに敗退したちょうどその頃、コロナ感染拡大で非常事態宣言が出され、カリフォルニア州が自宅待機令を出した。その瞬間から、食料品の買い出しと散歩以外には外に出られない生活が始まり、当然、ナニーの仕事にも戻れなくなった。  現在同居しているボーイフレンドは、働いていたゴルフ場の閉鎖によりレイオフされ、失業保険を申請した。彼の両親の自宅に2人で居候させてもらっており、家賃はかからないが、定収入はない。「この間、量販店のターゲットに食料品を買い出しに行ったら、失業した友達のギタリストが店員として働いていた。『働きたいならちょうどうちの店、店員を募集しているよ』と誘われた。ちょっと心が動いたのは確か」と彼女は言う。

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