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認知症研究35年の専門医が実践!「医師が認知症予防のためにやっていること」

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サライ.jp

文/印南敦史 年齢を重ねるとさまざまな病気のリスクが気にかかってくるが、なかでも無視できないのが認知症だ。 心のどこかで「年齢的に、まだ大丈夫」と感じていたりはするものの、実際のところ「まだ大丈夫」である確証はないに等しい。なんとなくそれがわかっているからこそ、「不安だけど、(きっとまだ大丈夫だから)考えないようにしよう」と思ってしまいがちなのではないだろうか? 私のなかにも、多少なりともそんな思いがある気がする。しかし、それではいけないのだとも思う。 『医師が認知症予防のためにやっていること。』(遠藤英俊 著、日経BP)の著者は、そんな認知症の専門医。35年以上にわたり認知症と関わってきた立場から、認知症予防についての一般向け書籍を書きたいと感じ、本書を著したのだという。 目的は、最新の研究をわかりやすく解説し、誰もができるやり方に落とし込んで認知症の予防法を伝えること。また、著者自身が自分のためにどういった認知症予防を実践しているのかについてもページが割かれている。 ちなみに自分のことについて書いていることには2つの理由があるそうだ。まずひとつ目は、認知症予防の方法は人それぞれで、つまりはパーソナルな予防が必要になるということ。 私というサンプルを通じて、「自分の体質によってやるべき対策をどう見つければいいのか」ということを理解していただければと思います。また、私はごく一般的な60代の男性ですので、私自身のやり方がそのまま参考になる方も多いはずです。(本書「はじめに」より引用) そしてもうひとつは、認知症予防においては、自分がやりたい「社会活動」に取り組むことが大切だから。社会活動とは、たとえば会社で働くことがそうであるように、社会と接点を持つ活動のことだ。 歳をとるとほとんどの人が退職して働かなくなるが、なにも社会活動を行わないでいると、認知症のリスクが高くなってしまう。著者も2020年3月に国立長寿医療研究センターを定年退職したため、大学での講義などと同様の社会活動として、本書に向き合ったわけである。 たしかに、定年退職はいろいろな意味で影響を及ぼすことになるだろう。もちろん、それは認知症についても同じだ。 いまは昔と違って、ひとつの会社に人生を捧げ、60歳になったら定年退職し、以後は余生を悠々と過ごすという生き方をする人は少なくなった。とはいえ多くの場合は、60~65歳のあたりに「ひと区切り」ということで退職することになるだろう。しかし、そこに落とし穴があるようだ。 退職のタイミングでは、どうしても生活のリズムが大きく変わりますが、ここをどう乗り切るかが、認知症を発症するかしないかに関係してくるのです。(本書14ページより抜粋) 一足先に定年を迎え、会社を去った先輩にひさしぶりで会ったら、たった数カ月のうちにガクンと老け込んでいて驚かされたというようなことがある。そういったときこそ、認知症のリスクに注意する必要があるということだ。 そして退職後は通勤の必要がなくなるため、おのずと運動不足になる。だが仕事であれ遊びであれ、好きなことをして健康的な日々を送るためには体力が重要だ。 特に鍛えたいのは、下半身の筋力。高齢者の体力低下は足腰からやってくるため、下半身を中心に鍛えることが大切なのだ。 実は、体力をつけること自体も認知症対策の一つです。筋肉が衰えて「フレイル」と呼ばれる虚弱状態になると、認知症のリスクが高まることがさまざまな論文から明らかになっています。(本書24ページより抜粋) 虚弱状態となって外に出る機会が減ると運動不足になるが、それは食欲の減退や骨折、さらには抑うつ状態などを招き、どんどん悪循環となっていく。 そのため著者もスポーツクラブに通っているそうだが、そこには正しいトレーニング法を教わるということだけでなく、もうひとつの効果があるという。通い続けることで、新たなトレーニング仲間ができることだ。 つまり、新たな“つながり”ができるのです。スポーツクラブで知り合いが増えることも、社会との関わりの一つです。(本書24ページより抜粋) 同じように、定年後の再雇用でもアルバイトでもいいので、仕事を続けることも重要だ。いうまでもなく、定年退職によって社会との接点がなくなれば、それも認知症のリスクにつながるからだ。 もちろん仕事だけではない。仲間とゴルフのラウンドを回るのでもいいし、ボランティアで地域と関わるのもいいかもしれない。どうあれ、社会との関わりを持つこともまた、認知症予防につながっていくのである。 したがって、「定年後の生活においてどんな活動に取り組むべきか」については、自分の興味や関心だけでなく、「社会的なつながりを持てるかどうか」も考慮しながら決めていくのがよいと著者は主張している。 * * * 本書に説得力があるのは、専門医としての知識のみならず、定年退職後の著者自身が反映されているからだ。そのため、先輩の体験談を聞いているような気持ちで読み進めることができるのである。 いつか必ず訪れる認知症のリスクと向き合うために、ぜひとも参考にしたい。 『医師が認知症予防のためにやっていること。』 遠藤英俊 著 日経BP 1,540円(税込) 発売日 2020年6月 文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。2020年6月、「日本一ネット」から「書籍執筆数日本一」と認定される。

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