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15歳の施設引き受け「極めて異例」 少年院後の受け皿どうする?福岡の刺殺事件

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西日本新聞

 福岡市の大型商業施設で女性(21)が刺殺された事件は、非行少年の立ち直りに関わってきた人々を揺るがしている。銃刀法違反容疑で現行犯逮捕された少年(15)は中学3年に相当する年齢で、九州の少年院を出て福岡県内の更生保護施設に移り失踪した。15歳が、少年院を出た後に施設に入るのは「極めて異例」。家族などの引き受け手がなかったとみられる。少年をどう支援して再非行を防ぐか。事件は「受け皿」の充実など重い課題を投げ掛けている。 【画像】少年院を出た後の社会復帰までの道  「被害者に心から申し訳ないとの思いを多くの関係者が抱いている」。少年院で指導に当たる法務教官OBの男性はこう語る。ネット上では「施設の人間は死刑」などと過激な書き込みが相次ぐ。元少年院長の服部達也京都産業大教授(矯正社会学)も「再犯を防げず沈痛な思い。今回の事件だけに目を向けるのではなく、少年犯罪の現状と矯正、更生の実態も知ってほしい」と訴える。

 少年事件は減り続けている。2018年、少年による刑法犯の摘発人数は過去最少の3万458人。窃盗が6割を占め、殺人は0・1%。少年院に行く少年も2108人と、00年の3分の1に減った。少年院出院者が再非行で2年以内に戻る再入院率は1割。再犯者が全体の3割を占める成人と比べ「少年院の教育効果は認められる」(法務省)。  「全寮制の学校」に例えられる少年院では、罪への内省を深める教育や職業訓練、親子関係修復にも取り組む。支援が受けられる保護観察を前提に「仮退院」で卒業するケースが大半だ。  少年の引受先は家族が80・1%で、更生保護施設や自立準備ホームが6・9%と続く(18年)。服部教授は「(自分の経験では)15歳で施設に引き受けてもらったのは1、2件。今回の少年には、よほど複雑な事情と生きづらさがあったのではないか」と推し量る。

 更生保護施設は、身寄りのない人などが少年院や刑務所を出て社会復帰するまでの「仮住まい」。全国に103施設あり、少年専用は2施設だけ。社会福祉法人などが運営する。  「衣食住」を提供し就職先のあっせんもする。基本的に出入りは自由。国の委託費頼みの運営で「経営はぎりぎり」(同省)が実情という。「人手不足で十分な支援には倍の人が必要」(保護観察官OB)との声もある。  少年を取り巻く環境はどんどん厳しくなっている。少年院入院者のうち35%が虐待を受けた経験があり、4割は母子家庭。入院者のうち知的障害など精神障害があるのは2割を超えている。法務教官OBは「少年院も施設も対応が本当に難しい時代」とうめく。  前述の保護観察官OBは「国が委託費を倍増させるなどして、対応が困難な少年を受け入れる専用施設が求められる」と提言。九州大大学院法学研究院の武内謙治教授(少年法)は今回の少年に対し「関係者は限られた選択肢の中で可能な措置を検討したのではないか」とした上で「少年本人の心情に添えていたのかどうか検証が必要だ」と話した。 (一瀬圭司、鶴善行、久保田かおり)

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