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『麒麟がくる』向井理、足利義輝として強さと儚さを体現 光秀との対峙は作品屈指の名シーンに

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リアルサウンド

 NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の第21回「決戦!桶狭間」が放送されたのは6月7日。その後、約3カ月コロナ禍で放送が中断し、8月30日に放送された第22回「京よりの使者」では、桶狭間の戦いから4年後が描かれた。主人公である長谷川博己演じる明智光秀が考えあぐね、願いを強くしているように、観ている側も『麒麟がくる』のを待ちわびる気持ちがさらに高まっている。 【写真】染谷将太演じる織田信長、第2弾ビジュアル  こんなにも『麒麟がくる』のを待っていたというのに、9月6日に放送予定だった第23回「義輝、夏の終わりに」は台風10号関連のニュースのため放送休止。13日の放送に改めて熱い視線が注がれることとなった。  気になるのは、自ら「将軍などと名ばかり」と言い放ち、都の実権を握る三好長慶(山路和弘)の傀儡と成り果てた足利義輝(向井理)だ。将軍としての気概をなくし、苛立ち、ときに投げやりな態度をとる義輝から、幕臣として義輝を支える細川藤孝(眞島秀和)でさえ心が離れそうな状態で、まさに冴え渡っているはずの月が雲に覆われているかのようだった。  室町幕府第13代将軍として生まれ、勢力ある三好長慶との対立と和睦に明け暮れる中で武士の棟梁として生きるべく、剣の腕を磨いた義輝。ままならない境遇にあっても簡単に捨てられないプライドがあり、憂いを帯びた表情さえも隠しきれない品の良さを感じさせる。そんな義輝を好演しているのが向井理だ。  本作の脚本を担当する池端俊策の作品『そろばん侍 風の市兵衛』(NHK総合)で向井は主演を務めた。そろばんが得意な剣豪・唐木市兵衛役でも、知的に振る舞いつつ、勇ましい太刀筋を見せつけた。ただ情熱を持って志を貫くのではなく、その言動に含みを持たせ、余韻を残す演技が印象に残っている。強さと儚さ、物憂げな中にも凛と光る志を見せる姿は、本作の義輝とも共通点が多い。今回のキャスティングもまさに必然だったと言えるだろう。  第22回では、義輝は細川藤孝を通じて京都に光秀を呼び寄せる。「わしは麒麟を呼べる男になりたいのじゃ。それは将軍になってからずっと願い続けてきたことじゃ。しかし、何もかもうまくいかぬ」と、本心を打ち明けた。将軍としての権威が失墜していることを誰よりも本人が強く感じつつ、それでも平和な世、麒麟を呼ぶ男になりたいと強い意志を見せたことで、思いを受け取った光秀は尾張の織田信長(染谷将太)を連れてくることを申し出る。  越前で牢人として暮らしていた光秀は、将軍家の力を取り戻すため、勢いのある織田信長の力を使おうと奔走することになる。実直で決して世渡り上手とは言えない光秀に対しては、理想とする新しい世をつくるために思いを共有できる相手として一目置いていた義輝。立場の違いもあり、光秀も多くを語らず、状況だけを見れば将軍の言葉を一方的に受けているだけとも取れる。しかし、世をどうにかしたいという2人の心が通い合っていることが確かに伝わってきた。  「初めての共演でしたので、役柄の立場はありますが、こちらが色々と吸収できればと思っていました。長谷川さんとのシーンは私が話すことが多く、長谷川さんはそれに対してリアクションする事が多かったです。リアクションはとても難しく、一つのリアクションでシーンが左右されます。それをとても丁寧に演じておられて、とても助かりました」と向井が長谷川との共演についてコメントしているように、互いを信頼し役を十分に理解している2人だからこそ、説得力ある名シーンになったのだろう。  第23回「義輝、夏の終わりに」のタイトルの通り、義輝に不穏な影が近づいている。史実では無念の死を遂げる義輝だが、『麒麟がくる』では彼の最期をどのように描くのか。そして、向井は義輝として最後に何を見せてくれるか。

池沢奈々見

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