〈物流の鉄道貨物モーダルシフトへの道〉カギは国際海上コンテナの鉄道輸送への取り込み
前回、国際海上コンテナとトラック間の積み替えが前提となっている日本では、国際輸送と国内輸送が断絶していると指摘したが、鉄道コンテナとトラック間の積み替えを前提としては、国内輸送モード間も断絶してしまうと考えるのは、筆者だけであろうか。
鉄道輸送へのモーダルシフトの鍵を握る国際海上コンテナの国内輸送
そこで、鉄道輸送へのモーダルシフトの観点から筆者が注目するのが、国際海上コンテナの国内輸送である。国際輸送と国内輸送が断絶しているという指摘とは矛盾していると思われるかも知しれないが、多くの場合国際海上コンテナとトラックの間で積み替えが行われているとはいうものの、輸出貨物をコンテナに詰め込むバンニングの40%前後、輸入貨物をコンテナから降ろすデバンニングの30%前後が、荷主施設で行われていることも事実だからだ。 国際海上コンテナの国内輸送は、ほぼ例外なく、シャーシに搭載されたコンテナをトラクターヘッドが牽引するドレージ輸送である。ドレージ輸送は、バンニングやデバンニングが荷主施設で行われている場合でも、港湾背後地などに立地する物流事業者の上屋や倉庫、保税蔵置場などで行われる場合でも、等しく標準的に運用されており、緊締車が普及し切れていない鉄道コンテナ輸送とは事情が異なる。 そこで、日本で流通しているコンテナ規格の分担率を輸送モード別に概観してみると、下図の通りとなる。 ご覧の通り、内航海運が、国際海上コンテナと鉄道コンテナといったコンテナのサイズの別なく、幅広くコンテナを取り扱っているのに対し、鉄道輸送は国際海上コンテナの取り扱いはほぼ“0”。ドレージを中心とするトラック輸送は鉄道コンテナの取り扱いはほぼ“0”と、棲み分けが明確である。 鉄道コンテナ輸送へのモーダルシフト拡大の鍵は、この棲み分け状態を崩すことではなかろうか。
実は国際海上コンテナに対応する日本の鉄道輸送
実は日本でも、国鉄がJRになる前の1968年から78年までの10年強の間、国際海上コンテナの鉄道輸送が行われていたが、その後89年に横浜港-東京港間の空コンテナ輸送が開始されるまで中断していたという経緯があるのだ。 その後、95年に横浜・東京-宇都宮間の標準コンテナ輸送が開始され、98年には横浜-仙台間で背高(ハイキューブ)コンテナ輸送が開始される等、細々ではあるものの、国際海上コンテナの鉄道輸送は行われてきたのである。 故に、下表が示す通り、JR貨物の主要貨物ターミナルの中には40フィートの国際海上コンテナを取り扱うことのできるターミナルが存在しているのである。 2024年7月3日の「【日本の高速道路は物流に不向き?】物流「2024年問題」に内航海運へのモーダルシフトが必要な理由」において筆者は、日本の長大な海岸線上には130近い港湾が林立しており、その70%前後でコンテナの取り扱いが可能であり、モーダルシフトにとって極めて有用なインフラであると指摘したが、上表の全国15カ所の貨物ターミナルも、全国22カ所の一般トラックターミナルに匹敵するインフラであると言えるのではなかろうか。