北海道新幹線、難航する「トンネル工事」の実態 軟弱地盤や巨大岩出現、地質に工法が合わない
「前回まで土木・設備についての議論を重ねてきて、今回は監査・検査に関する議論を行った。ようやくそれぞれの状況が粗々に見えてきたので、次回から全体の工程を議論する段階に入る」――。 【写真を見る】青函トンネル内を疾走する新幹線E5系や、新函館北斗―札幌間の各地で進められているトンネル工事の様子 北海道新幹線・新函館北斗―札幌間の整備に関する有識者会議が11月18日に行われ、会議終了後に国土交通省の新幹線建設担当者がこう述べた。 全体の工程の議論が終われば、工事がいつ終了するか、すわなち、新幹線の札幌延伸がいつ実現するのかという見通しが立つことになる。ただ、工事の終了時期を見定めるには不透明要因が多すぎる。
■開業時期の見定め「技術的に困難」 この有識者会議は2022年9月にスタートし、これまで11回にわたり地質や事業費などの精査を行ってきた。 新函館北斗―札幌間の工事は2012年に始まった。このときの計画では2035年度の完成・開業を目指していた。しかし、早期開業を熱望する地元の声を受け、2015年の政府・与党申し合わせで開業を5年前倒しして2030年度とすることが決まった。2030年度とは最長で2031年3月末という意味である。
【写真】青函トンネル内を疾走する新幹線E5系や、北海道新幹線新函館北斗―札幌間の各地で進むトンネル工事の様子 札幌市は2014年に冬季オリンピック・パラリンピックの招致を表明した。当初は2026年開催を目指していたが、2018年平昌、2022年北京に続き3大会続けてアジアで開催するのは難しいという判断から、招致目標を2030年に切り替えた。 札幌オリンピックが開催されるとしたらおそらく2030年1月から2月にかけてということになる。地元の間では、「新幹線開業をさらに1年前倒しして、オリンピックに間に合わせてはどうか」という威勢のいい声も上がった。
ところが、2020年10月に風向きが変わった。北陸新幹線・金沢―敦賀間の工事が計画よりおよそ1年半遅れており、2022年度末の開業には間に合わないことが明らかになったのだ。北陸新幹線の開業が遅れるなら、北海道新幹線は予定どおり開業できるのか。こんな背景から国は北海道新幹線・新函館北斗―札幌間の整備に関する有識者会議を立ち上げた。 会議を重ねるにつれ、北海道新幹線でも工事が遅れ、費用が膨らんでいる実態が明らかになってきた。工事を担う鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)は2024年5月、「2030年度末完成・開業の目標達成は極めて困難」と国に報告した。ただ、新たな開業時期については「現時点で具体的な時期を示すことは技術的に困難」としており、有識者会議で引き続き議論を行い、新たな開業時期を探ることになった。