西部ガス、北九州市のLNG受け入れ拠点に3基目タンク増設へ…貯蔵能力を6割引き上げ供給力を強化
西部ガスは28日、北九州市の液化天然ガス(LNG)受け入れ拠点に、3基目となるタンクを増設すると正式に発表した。天然ガスは脱炭素化に向けて国内外で需要が高まっており、貯蔵能力を6割引き上げ、供給力を強化する。2025年夏に着工し、29年度上半期の稼働開始を目指す。(松本晋太郎) 【地図】ひびきLNG基地の位置
同日のグループの取締役会で、同市若松区の「ひびきLNG基地」に約500億円を投じ、容量23万キロ・リットルのタンク1基を新設することを決定した。既存の2基(各18万キロ・リットル)と合わせた貯蔵能力は59万キロ・リットルとなる。
同社の投資額としては同基地の建設費(約660億円)に次ぐ水準となるが、加藤卓二社長は記者会見で、「投資をしなければ(企業は)成長できない。今まで諦めていた需要を獲得し、活路を開いていきたい」と力を込めた。
LNGを巡っては近年、石炭を熱源とする工場などで切り替えのための需要が伸びている。同社は、北部九州などでグループの年間販売量の半分に当たる年30万~40万トンの潜在的なニーズがあると試算する一方、現行の貯蔵能力では大口顧客との契約が難しく、商機の拡大にはタンクの増設が欠かせないとみていた。
一方で、最大の懸念となっていたのが事業費だった。資材の高騰などで建設費が大きく膨らむ見通しとなったことから、今年秋、投資の可否を決めるために入札を実施。「財務体質に問題が生じない水準」(担当者)に収まったことで、最終的に増設を決めた。同社は供給力が増す利点を生かし、経済発展に伴って需要が拡大する東南アジア地域への供給などを狙う。
ただ、LNGの調達を巡る環境は不透明さを増している。同社は現在、マレーシアなどからLNGを仕入れているほか、ロシア極東の資源事業「サハリン2」からも一部を調達しているが、ロシアのウクライナ侵略などで国際情勢は目まぐるしく変化している。LNGを安定的に確保しつつ、投資に対する効果をどう最大化できるかが課題となりそうだ。